世界を割る

第49回 駄菓子のコーラドリンクで割る

ニンテンドースイッチが家にある。ニンテンドースイッチのゲームにはインターネット回線を使って遊べるものが多くて、遠く離れた場所に住む友達と対戦ゲームで戦うことができたりするのだが、そうするためには「ニンテンドーオンライン」というプランに加入しなくてはならない。

ニンテンドーオンラインは有料で、月いくらとか年いくらとか、コースを選んで契約することになるのだが、それに登録すると加入者特典として、ファミコンとスーパーファミコンの往年のソフトがいくつか遊べるようになる。タイトル数はそんなになくて、「あれがあったらいいのに!」という名作が微妙にラインアップから外れていたりするのだが(「ファミスタ」遊べるようにして欲しい!)、たまにやってみると多少の暇つぶしにはなる。

家にニンテンドースイッチがあるといっても主にやっているのはうちの子どもたちで、私は最新ゲームをガシガシやるということもなく、どうしても仕事に取りかかる気になれない時などに電源を入れるぐらいだ。「なんでもいいからとりあえずゲーム!ゲーム!」と、スーパーファミコンの過去のタイトルの中から適当に選んだのが「パネルでポン」というゲームであった。

「パネルでポン」は「テトリス」とか「ぷよぷよ」みたいな、縦長の枠内にブロック的なものが積み上がり、それを並べて消していくという、いわゆる“落ちもの”系のパズルゲームなのだが、プレイヤーは横に並んだ二つのブロックを左右入れ替えるということしかできなくて、初めてやってみた時、それがすごくもどかしかった。うまくいかずイライラして、「あんまり面白くないな。もうやめよう」と思い、実際すぐにやめた。しかし、仕事に行き詰った時などにまた何度か遊んでみるうち、徐々にコツがわかっていった。

「パネルでポン」が他の落ちものゲームと大きく違うのは、重力に従って上から下へとブロックが落下していく最中にもプレイヤーがブロックを動かせるという点だ。これにより「アクティブ連鎖」という連鎖消しが可能となる。これは説明が難しいし、今後一生「パネルでポン」をやることのない人にとってはまったく無駄な知識だと思うので省くことにするが、とにかく、一手二手先を予測しつつチャカチャカと素早く動かし続けることでより多くのブロックを効率的に消していけるのだ。

それがたまにうまくいくとめちゃくちゃ楽しい。そして、ゲームの感触がすごくよくて、ブロックが消える「スポポポッ」という音、ブロックが下に落下する時の「ドスン」という音などに絶妙な気持ち良さがある。画面内でブロックで埋まり、「もうゲームオーバーだ!」という寸前で連鎖がうまく発生した時など、わっとテンションがあがる。気づけば私は「パネルでポン」の虜になっていた。パネポン中毒、「ポン中」である。

最近では、夜、布団に横たわって目をつぶるとパネポンの画面が出てきて、「このブロックがこう落ちてきたら、ここをこう入れ替えて1連鎖で、次にこうすれば2連鎖だ」など、とゲーム画面がスローで動いていくようになった。数日前、友達と会って話をしていた時も、会話はしっかりしているのだが、頭の片隅ではパネポンのブロックが落下していた。なんでこんなことになってしまったんだろうか。

いつのことだったがすっかり忘れてしまったが、ある雪深い地方に旅をした時、たまたま歩いた先で雪祭りが開催されていた。会場内には雪のすべり台があったりして家族連れで賑わっていたのだが、敷地の中に巨大なかまくらも設置されていて、10人ぐらいは余裕を持って入れるようになっていた。私はそれまで大きなかまくらに入ったことがなかったので、「わー!すげー!」とはしゃいで中に入った。すると、内部に中学生か高校生と思われる男子が一人立っていて、スマホを手に持って「パズドラ」をしているのが見えた。かまくらの中でパズドラ……!よりによってこんな場所でやらなくてもいいだろうに、とその時は思ったものだが、今、私はかまくらの中でパネポンがしたい。

近所のスーパーに夕飯用の食材を買いに行った帰り、通りの向かいのタバコ屋の店内がチラッと見えて、どうやら中で駄菓子を売っているらしかった。「へえ、こんな近所に駄菓子屋を売ってる店があったとは」と嬉しくなって入り、300円分ぐらいあれこれと駄菓子を買って帰った。

今回はそこで買ってきたものの一つ、「コーラドリンク」で甲類焼酎を割ってみることにした。兵庫県姫路市にある「マルゴ食品」というメーカーが作っている商品で、チューペットを太くしたような容器の中にコーラ風味のドリンクが詰まっている。あくまで“コーラ風味”で、炭酸は入っていない。しかし、155ml入りで40円か50円か、それぐらいの価格で、これは子どもにとっては嬉しい量と値段だろう。

グラスに「コーラドリンク」を注ぎ、そこに甲類焼酎を足して飲んでみると、悪くない。しかしやはり炭酸のシュワシュワ感は欲しい気がしたので、氷と炭酸水をたっぷり加えてみた。改めて飲んでみると、おっ!これはうまい。東京の古い酒場にある「焼酎ハイボール」の味わいに近い気がする。プレーンなチューハイにあまり甘くない梅シロップでほんのり香りをつけた、「下町チューハイ」とも呼ばれるあの感じだ。そもそもきっと「コーラドリンク」と「梅シロップ」の味が同系統なのだ。味の構成要素が似ているというか。

「コーラドリンク」をまるまる一本入れると駄菓子の味に寄り過ぎるので、3分の1か半量ぐらいを香りづけとして使うのがおすすめだ。すっきりした後味で、どことなく親しみを感じる味となり、これが「パネルでポン」をやりながら飲むのにぴったりなのである。夕飯に食べたピザが少し残っているから、これをつまみにしよう。さあ、今日も朝までパネポンだ。

スズキナオ
スズキナオ
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1979年生まれ水瓶座・A型。酒と徘徊が趣味の東京生まれ大阪在住のフリーライター。WEBサイト「デイリーポータルZ」「集英社新書プラス」「メシ通」などで執筆中。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーで、ことさら出版からはbutajiとのユニット「遠い街」のCDをリリース。大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、パリッコとの共著に『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)。

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