世界を割る
「世界を割る」第30回

第30回 改めてノンアルコール飲料で割る

「世界を割る」第30回

「梅酒は飲ーみたい!酔ーいたくないっ!」と歌うCMがある。チョーヤのノンアルコールドリンク「酔わないウメッシュ」のCMである。

初めてこの歌を聴いた時はびっくりした。どういうことだろう。「東大いきたーい!勉強したーくないっ!」みたいな。「プロ野球選手になりたーい!練習したくないっ!」とか「お寿司が食ーべたい!金払いたくないっ!」とか「生まれたけーれども、死にたくないっ!」とか、そういうような無茶。

しかし、それよりもびっくりしたことに、ここ最近ノンアルコール飲料を飲む頻度が急激に増している私には、あの歌で歌われている感覚がだんだんわかってきたのだ。実際、「ノンアルコールビールってビール飲んだような爽快感があるのに酔ってズーンと体が重たくなったりしないから便利だわー!」と思っていたりする。ほとんどチョーヤ状態。

もちろん酒が好き、というかほろ酔いぐらいの気分が好きなのには違いないので、少しぐらいはアルコールが欲しい。でもそんなに重たい感じじゃなくてもいいんだよなーという時、ノンアルコール飲料に焼酎をチョイ足しして飲むのがいいんじゃないかと、今回はそれを試したい。

もともと当連載は、惜しまれつつ廃刊となった『ミュージックフリーペーパーUNGA!』誌上でスタートしたものなのだが、その第15回にまったく同じように甲類焼酎をノンアルコール飲料で割ってみた回があった。それはもう2年近く前のことで、あの頃の自分は今とは違って、「ノンアルコール飲料にアルコールを足してみたりして(笑)」という、どこかヨコシマな気持ちがあった。バカなことしてやれ!みたいな。だが今は違う。私はこの飲み方を、広く、本気で提唱したい。

というのは、今年、2019年の8月に発売された「キリン カラダFREE」っていうノンアルコールビールのうたい文句がすごいのだ。「お腹まわりの脂肪を減らす」と缶に書いてある。どういうこと?そんな、体の部位まで指定できるのか!?飲んだ液体が、お腹の脂肪に向かって進んでいって、チューン!チューン!と攻撃してくれるような、そういうことだろうか。もしそうなら、最近お腹の肉がタプタプしてしょうがないのでぜひ攻撃して欲しい。

この飲料に含まれている「熟成ホップ由来苦味酸」というのがそういう効果を持っているとのこと。実際の効果はまあわからないけど、プリン体ゼロとか糖類ゼロとかじゃなく、もはや、普通の水よりも体に良さそうだからすごい。ここに甲類焼酎を足せば、「お腹まわりの脂肪を減らすビール味の酒」ができるわけである。痩せる機能を手に入れた、“スーパービール”だ。

さて、「キリン カラダFREE」で甲類焼酎を割ってできあがったスーパービールだが、味はまったく問題なし。旨い。ホッピーが好きな人なら「いいよ!アリだよ!」と言ってくれると思う。しかも何がすごいって、焼酎の量によってアルコール度数を自在に操作できる点である。軽めのビールって、飲もうと思ってもなかなか飲めるもんじゃない。その点、このやり方ならアルコール度数2~3%ぐらいの、ほろよいビールも簡単に作れるのだ。

もちろん、他のノンアルコール飲料で試してもいい。「トクホのノンアルコール」をうたい文句にしている「サッポロプラス」で焼酎を割っても同様にホッピーライクな味わいになる。また、「スタイルバランス 香り華やぐハイボールテイスト」は「食事の脂肪や糖分の吸収を抑える」らしいノンアルコール飲料なのだが、これで焼酎を割ると、“スーパーハイボール”ができあがる。略してスーパーボール。

「お腹まわりの脂肪が減る」だの、「糖分の吸収を抑える」だの、そんなのどうでもいいよ!小せえこと気にしてんじゃねえよ!という方もいらっしゃるだろう。それもわかる!だけど一度、スーパービールやスーパーボールを作って飲んでみて欲しい。この罪悪感の無さ。「自分は今、体にいいものを飲んでいる!」と、嘘でもいいから信じられることの心地よさよ。

一点だけ難しいのが、これらの機能性ノンアルコール飲料は、まだまだコンビニに並ぶほどメジャーじゃないのだ。スーパーでもノンアルコール飲料に力を入れてるところとそうでないところの違いがハッキリしていて、品揃えの豊富な店じゃないと、ノンアルコールビールが1種類か2種類のみ、圧倒的な量のアルコールたちの隅で恥ずかしそうにポツンと並んでいるだけだったりする。あきらめずに探して欲しい。そして忘れずに甲類焼酎も一緒に買って帰り、スーパーな酒を作って飲んでみて欲しい。

スズキナオ
スズキナオ
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1979年生まれ水瓶座・A型。酒と徘徊が趣味の東京生まれ大阪在住のフリーライター。WEBサイト「デイリーポータルZ」「集英社新書プラス」「メシ通」などで執筆中。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーで、ことさら出版からはbutajiとのユニット「遠い街」のCDをリリース。大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』、『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』(共にスタンド・ブックス)、『「それから」の大阪』(集英社)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』(新潮社)。パリッコとの共著に『酒の穴』『酒の穴エクストラプレーン』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)、『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)。

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