世界を割る
「世界を割る」第25回

第25回 賞味期限切れ飲料で割る

「世界を割る」第25回

前回、「おいなはれ自販機」という、賞味期限切れが近いドリンク類を安く売る自販機のことを書いた。その自販機で買った激安飲料で焼酎を割って飲んだのだった。今回は同じ方向にさらに一歩踏み出し、“賞味期限切れ食品専門店”で買ったドリンクで焼酎を割ることにする。

大阪の野田という町に今年の春、「eco eat」という賞味期限切れ食品専門店がオープンした。テレビのニュース番組などにも取り上げられているのを目にして、賞味期限が切れた海外の袋入りインスタントラーメンが1袋20円という価格で売られていたりするというので、気になっていた。

オープンから1ヶ月ほどした頃にようやく行くことができた。なるほど、店頭に並ぶ激安商品の数々。商品がほとんど輸入食品で、見たことのないものばかりなのが面白い。国内生産の品物も並んでいるが、普通にコンビニで見るような大手メーカーのものではなく、初めて目にするものだらけ。小さなメーカーが余らせてしまった在庫を、どんなルートでかはわからないが、この店が引き取って売っているのだろう。

5袋入りのパックが50円、つまり1袋10円のインスタントラーメン。飲み会の前に飲むといいらしい栄養ドリンクが1本15円。パクチー風味の粉末調味料が1本60円。というように、なんだか色々雑多なものがとにかく安い。賞味期限がすでに切れているものもあるけど、もうすぐ切れる、期限が迫っているがゆえに安いものも多いようだ。

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焼酎の割り材に使ったら面白そうな飲料も色々売られていたので買って帰った。これでいつも通り、甲類焼酎を割って飲んでいく。

まずは、「Waiola」というメーカーの「100%ココナッツウォーター」だ。賞味期限を1ヶ月ぐらい過ぎている。1本10円で売っていた。割る前にそのまま飲んでみたけど、結構びっくりした。国内でもココナッツミルクテイストの飲み物はよく見るようになってきたけど、大抵ああいうのって甘みがある。甘みの後にココナッツのちょっと鼻に抜けるような香りが来るような印象だけど、この「100%ココナッツウォーター」はそんなに甘くない。甘みよりもむしろ塩味を感じるような。それがココナッツの香りとともに口に広がる。それで甲類焼酎を割ってみると……なんだろう、まったく飲んだことのない新感覚の酒ではあるのだが、嫌ではない、焼酎との相性はむしろよいように思える。もともとの甘みと塩味に、甲類焼酎の味わいが上手にするりと入り込み、仲良くやっているような。

次は同じく「Waiola」というメーカーの「ココナッツウォーターチョコレート」。こちらも賞味期限を1ヶ月近く過ぎていて、1本10円。さっきのドリンクにチョコレートを加えたものらしい。これもまずはそのまま飲んでみたのだが、旨い。チョコレートが甘くなく、すっきりしているのだ。これはいい。スイスイ飲める。甲類焼酎との相性も良い。チョコレートのコクとほろ苦さに焼酎の風味が溶け込み、ほぼ消える。「ココナッツチョコレートハイ」って名前をつけたらなんかオシャレな気がしてきた。

最後は「青森県りんごジュース」というメーカーの「Shiny林檎倶楽部 トキ」。元値は180ml入りで150円と高級感のある設定。それもそのはず、青森産のりんご品種「トキ」の果汁100%で作られたドリンクなのである。普段私が飲む機会のない“いいジュース”だが、半額近い85円で売られていた。こちらは賞味期限がまだ4ヶ月ほど先である。一口飲んでみると、奥深い甘みがあり、香りもいい。旨い。焼酎の割りものにするのはちょっともったいない気がするけど、割る。いぜんとして旨い。りんごの味わいの厚みに焼酎が隠される。

それにしても、「おいなはれ自販機」がいたるところに設置されているのも、今回の賞味期限切れ食品専門店があるのも大阪だ。大阪には「賞味期限が近いとか、少し切れているぐらいのことで値段が一気に安くなるのなら、そりゃそっちの方が得だろう」という感覚があると思う。

例えば、いつも私は不思議なのだが、大阪には“500円ぐらいで食べられてそこそこうまいラーメン”みたいなものがあまり無いのだ。「餃子の王将」などのチェーンとか、立ち食いうどん屋にたまにメニューとしてある「中華そば」ぐらいか。東京に町中華の安くて旨い名ラーメンがたくさんあることを思うと不思議だ。もしかしたらラーメンの位置にうどんや粉もんがあるのかもしれないけど、なんとなく大阪では「ラーメンなんてインスタントでもレトルトのやっすいのでも十分美味しいやん」と思われているんじゃないか。で、せっかく行くなら本当に凝ったスープの、家庭では絶対食べられないような高級志向のラーメン店を選ぶ。だから大阪にはめちゃくちゃ時間をかけて作った濃厚スープが売りのラーメン店が多い。圧倒的にこだわり抜かないと認めてもらえないのだ。500円ぐらいの雑ラーメンを愛してやまない私には少し寂しい環境ではあるが、それがまた大阪の面白さだと感じている。