世界を割る
「世界を割る」第1回

第1回 大阪を割る!その1

「世界を割る」第1回

初めまして。チミドロというバンド名で活動しています、スズキナオと申します!ふつつかものですがよろしくお願いいたします。

私は1年ちょっと前にそれまでずっと住んでいた東京を離れ、大阪に引っ越してきた。まだまだ大阪の色々な面が新鮮に映っている毎日だが、居酒屋で飲んでいてよく思うのが、「大阪には焼酎を自分で割るカルチャーがないなー」ということ。東京の下町で飲んでいて、例えば「チューハイ」を注文したとする。カウンターの上に焼酎が入ったグラスと瓶入り炭酸がトントンと置かれ、客はそれを自分で割って飲む。自分好みの濃度に調節できるという点が大きな利点だろうか。店によって焼酎の量が違ったりするのも楽しみのひとつだ。

ホッピーなんかまさにそのスタイルで、1本のホッピーに対して焼酎を何回おかわりするかを考えながら飲んでいくことができる。ホッピーを「ソト」、焼酎を「ナカ」と呼び、「ソト1ナカ3」(ホッピー1本で焼酎3回おかわりということです)といったりする。

まあ、そんな細かいことはいいのだが、「自分で割って飲む」という行為には、子供の頃に理科の実験でワクワクしたような、童心にかえるような楽しみがあるように思う。酒だけど。

一方、大阪の居酒屋で「チューハイ」を頼んだらまず間違いなくアサヒビールの「樽ハイ倶楽部」に代表されるような、出来合いのものが出てくる。濃度も炭酸の強さも一定。安心といえば安心だが、味気ない気もする。

これはおそらく、大阪の飲み客がスピード感を大事にしているからだと思う。居酒屋に入って飲み物を聞かれるまでの速さにはいつも驚く。「いらっしゃい」のかわりに「飲み物なんにしましょ?」と言ってくるレベルである。パッと頼んでパッと飲みたい人にしたら、グラスと瓶が出てきて自分でやらなきゃならないなんて、ただ面倒なだけなのである。大阪でホッピーを出す店があまりないのもそういう理由じゃないだろうか。

と、なると大阪にいながら「自分で割る」のが好きな私は、家でやるしかないわけだ。せっかく家で飲むんだから、焼酎を色々なもので割って飲んでみようじゃないか!液体であればなんだって割りものになるのだから。というところから、今回の企画が生まれたのであった。

さて、第1回は大阪が誇る飲料メーカー「サンガリア」の飲み物で焼酎を割ってみることにした。いかにも大阪らしいチープなCMや攻めの商品展開など、ナニワの心意気を見せてくれるメーカーである。私はサンガリアの商品名がいちいち好きである。例えば現在販売されているお茶系飲料にはこんなものがある「あなたのお茶」「これ麦茶」「烏龍茶です。」……なんか全部適当!最高!公式サイトで企業沿革を見ていたら1985年に「お茶」という名前で缶入り緑茶を発売したとある。「お茶」って!

迎え撃つ焼酎は三重県・宮崎本店の「キンミヤ焼酎」。割りものに合わせるには最適な主張し過ぎない味わいで、東京の下町では絶大な支持を誇る焼酎である。大阪でも大きい酒屋に行くと手に入る。と、なんと今回はここで時間となってしまった。次回、いよいよ大阪を割る!(初出:ミュージックフリーペーパー『UNGA!』No.163)

スズキナオ
スズキナオ
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1979年生まれ水瓶座・A型。酒と徘徊が趣味の東京生まれ大阪在住のフリーライター。WEBサイト「デイリーポータルZ」「集英社新書プラス」「メシ通」などで執筆中。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーで、ことさら出版からはbutajiとのユニット「遠い街」のCDをリリース。大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』、『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』(共にスタンド・ブックス)、『「それから」の大阪』(集英社)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』(新潮社)。パリッコとの共著に『酒の穴』『酒の穴エクストラプレーン』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)、『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)。

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