世界を割る
「世界を割る」第20回

第20回 そこにあった果物で割ってみる

「ことさら出版」でスタートさせてもらった当連載、実はいきなり第20回だ。音楽情報を掲載するフリーペーパーとしてかつて全国で配布されていた『UNGA!』に、2016年から2018年まで毎号連載させてもらっていた。『UNGA!』の休刊に伴って一度は最終回を迎えたのだが、この度「連載を継続してみませんか」とお声をかけていただき、引き続きこの場をお借りして書かせてもらうことにした。

と、書くとなんだか立派な連載が再開されるかのような重みが生まれてしまいそうで不安なのだが、内容は、「お酒(主に焼酎)を色々なもので割って飲んでみる」というもの。つまりまあ、割とどうでもいい話なのだ。

お酒が好きになってあちこちの居酒屋へ行ってみると、すごくたくさんのドリンクメニューがあることを改めて思い知る。特に焼酎を様々な割り材で割って飲ませるメニューのバリエーションは豊富で、その店独自の個性的なメニューがあったりもする。焼酎に限らず、おでん屋さんで日本酒を「出汁割り」にして飲ませてくれたり、ワインをジュースで割るとか、考えてみればカクテルだって、どんなリキュールを何で割るかという楽しみだとも言えるし、強い酒を何かで割って薄めたり、風味を変化させて飲みやすくしたりという工夫には、文化と呼んでも違和感がないほどの深みと広がりがある。

と……あれ、どうしても大げさに書いてしまう。この場で私がやりたいのは、普段から飲んでいる甲類焼酎を色々なもので割って飲んで、ちょっと美味しいとかこれはあんまりだとか、そういうことを確かめてみたいだけなのだ。何卒よろしくお願いいたします。

いつも原稿を書くにあたって、「今度はこんなテーマを設けてみよう」と、例えば、スーパーマーケットの成城石井に行ってオーガニックなお茶系飲料を買ってきて焼酎の割り材にしてみたり、スターバックスで買った飲み物で割ってみたりしているのだが、今回は困った。割り材を調達しようにも所持金がまったく無いのだ。かろうじて甲類焼酎の2.7リットル入りペットボトルが半分残ったものが部屋にあるが、その割り材を買う金がない。ライターとは名ばかりの無気力生活を送っている私は当然の報いとしていつも貧窮しており、この連載でも「また金が無い」というようなシケた話が多くなると思う。つい先日も、幼稚園に通う子どもに「大丈夫!あなたはお金を持っている。ゼロ万円を持っている」みたいなことを言われて涙が出そうになったばかりなのだ。

まあそれは今はよくて、「お金を使わずに割りたいぞ」と思って、「水道水か?」とちょっと考えたのだが、それは少し味が想像でき過ぎる。困って冷蔵庫をあけたら、リンゴとキウイが入っていた。そう言えば、実家から送られてきたミカンも物置にたくさんある。「これだ!」と膝を打ち、3つの果物をミキサーにかけ、そのジュースを割り材にしてみることにした。

まずはリンゴを適当に切ってミキサーに入れ、そこに少々水を加えてかき回す。ほぼ100%のリンゴ汁ができた。飲んでみるとそんなに甘みを感じず、むしろ酸味が強い。グラスに焼酎を注ぎ、このジュースを加えて氷を入れてかき回して飲む。すごく美味しい。次にミカンの皮をむいてジューサーに放り込み、スイッチ、オン!ガーッ!できあがったミカン汁でまた焼酎を割って飲んでみる。リンゴよりこっちの方が甘い気がする。そしてこれもまた美味しい。キウイも皮をむいてミキサーでゴォー!これも焼酎との相性は最高。相性というか、果汁のパワーで結構な量の焼酎を入れても全然フルーツが勝つ。最後は、リンゴ、ミカン、キウイを混ぜたミックスジュースを作って焼酎を割ってみたのだが、ただ「体に良いことしてる!」としか思えない素敵な味。リンゴのシャリシャリや、キウイのプチプチが飲んでいて口に楽しい。これ、みんな普通にやってることなんじゃないだろうか?かなり普遍性を感じる旨さなのだ。お店で出そうと思ったら手間なのはわかる、けど、家で飲む際には色々なフルーツで試せるし、かなりいいのでは?一点だけ、一杯飲むとかなり満腹になってしまうという弱点はあるのだが、いや、飲み過ぎずに済むんだからむしろメリットじゃないか。