世界を割る
「世界を割る」第78回

第78回 「サッポロッピー」で割る

「世界を割る」第78回

家のインターホンが鳴って荷物が届いた。箱を開けてみると「サッポロッピー」の瓶が現れた。札幌市中央区・狸小路にあるダイニング「mayu繭」から送っていただいたものだ。

私は2017年に一度、グルメ情報サイトの取材でこのお店にお邪魔したことがある。その時も「サッポロッピー」を飲ませていただき、そのことについて書かせてもらった。「サッポロッピー」は、「mayu繭」が独自に開発した“割り材”である。「サッポロッピー」自体はノンアルコールの瓶入り炭酸飲料で、甲類焼酎をそれで割ってもいいし、そのまま飲んでもいい。甲類焼酎だけでなく、ワインやウイスキーを割ったっていい。

リカーショップに行くと色々な種類の割り材が売られているが、飲料メーカーでなく、個人が経営する飲食店が主体となって作っている割り材というのは非常に珍しいのではないか。「mayu繭」の店主である繭さんが、色々な苦難を乗り越えながら販売までこぎ着けたものだと聞いた。

私が取材した2017年時点で初期モデルの「サッポロッピー」が販売されていて、それが一旦終売となり、時を経て2024年に再びリニューアル販売されたとのことで、試飲用にと送ってくださったのだった。

早速、甲類焼酎を「サッポロッピー」で割って飲んでみる。「そうだ!こういう味だった!」と、記憶が蘇ってくる。コーヒーテイストで、レモンの酸味がガツンと来て、炭酸感もしっかりあって、他に似たものが思い浮かばない独特の味わい。初めて飲む人はちょっと驚くかもしれない。久々に飲んだ私も、前に飲んだことがあるのにまた驚いた。独特であり、なんだかクセになる味である。

繭さんにお礼のメールをする際、この連載で取り上げさせてもらいたい旨をお伝えし、図々しくも「サッポロッピー」についていくつか質問させていただいた。そしてその質問と回答をメールインタビューの体裁に整え、掲載させていただくことになった。

以下の通りである。

――前回の取材でもお伺いしたことではありますが、あえて今一度ご説明いただくとしたら、「サッポロッピー」とはどんな飲料でしょうか。

繭さん「札幌発の炭酸飲料です。スタートからはや7年? その中、コロナが4年。コロナは世の中全てが大変でしたが、飲食店経営の私にとっては特に想像できない月日でした。2号店のオープンがコロナのタイミングと重なり、3か月延期。『サッポロッピー』どころではありませんでした。でも、そんな大変な時期を乗り越えた今こそ、もう一度サッポロッピーに再挑戦したいと思いました」

――今回のリニューアルで大きく変わったところはありますか?

繭さん「色々考えた結果、結局黄色のみに絞りました(※スズキ注 2017年に販売された初期モデルの「サッポロッピー」には黄色のラベルと、赤のラベルの2種類があり、赤の方がより濃い味に作られていた)。味には変更はなく、ラベルを若干変えただけです。売れてきたら味のアレンジをしたいです」

――リニューアルにあたって大変だったことはありますか?

繭さん「リニューアルに際して、色んな人の意見を聞き過ぎて…悩みました。そして、変えないことに。それよりも発注した後のことです。賞味期限があるので、そこが一番大変です。捌けるところを探すことが一番の課題です」

――「サッポロッピー」はどうすれば飲めますか?

繭さん「今のところは当店2軒で飲めます。『ジムニーワークス』という会社に協力してもらい、通販もする予定です」

――改めて、どんな飲み方がおすすめでしょうか。

繭さん「飲み方は十人十色です。リニューアルにあたって色んな方の意見を聞いたのですが、『アイスクリームを入れて飲む』という人もいてビックリでした。ノンアルコール飲料としてそのまま飲むという人も多いです。ただ、一番は焼酎です。サッポロ焼酎(※スズキ注 サッポロビールが販売している甲類焼酎)がおすすめです。個人的には赤ワインを割るのが好きです。その人ならではの飲み方があると思います。氷を入れる/入れない、グラスによっても不思議に味が変わってきます」

――「サッポロッピー」を飲みながら食べるのにおすすめの料理はありますか?

繭さん「今一番おすすめしていきたいのはジンギスカンです。サッポロッピーはさっぱりした味なので、こってりした料理に合うかな。ジンギスカン店へ営業していきたいと考えています」

――お店で飲んだみなさんの感想はどうですか?

繭さん「最初は『?』という方も多かったですが、最近は『美味しい』という感想が多いです。当店独自のものだと言うと驚かれます」

――最後に「サッポロッピー」をまだ飲んだことがない人に向けてひとことお願いいたします!

繭さん「サッポロッピー、是非、呑んで下さい。“呑まさり”ますよ(※スズキ注 『呑まさる』とは、北海道の言葉で、『ついついお酒が進む(飲まされる)』という意味合いだそうです)」

と、こんな風に、繭さんの思いを聞くことができたのだった。「mayu繭」では今年の4月から立ち食い寿司を始める予定とのこと、そこでももちろん「サッポロッピー」をアピールしていくし、他にも色々な企画を考えているらしい。

前回「mayu繭」に行って「サッポロッピー」を飲んでからもう7年も経ってしまった。このリニューアルをありがたい機会として、久々に札幌に行きたいと思っている。

※編集注:2017年のスズキさん執筆の記事はこちらになります。
生誕地は札幌の小さな酒場?全国でも珍しいオリジナル割り材「サッポロッピー」を飲んでみる - メシ通 | ホットペッパーグルメ

スズキナオ
スズキナオ
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1979年生まれ水瓶座・A型。酒と徘徊が趣味の東京生まれ大阪在住のフリーライター。WEBサイト「デイリーポータルZ」「集英社新書プラス」「メシ通」などで執筆中。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーで、ことさら出版からはbutajiとのユニット「遠い街」のCDをリリース。大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』、『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』(共にスタンド・ブックス)、『「それから」の大阪』(集英社)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』(新潮社)。パリッコとの共著に『酒の穴』『酒の穴エクストラプレーン』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)、『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)。

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