暑い夏には冷たいもので焼酎を割りたくなるものである。先日、友人と真昼間の公園のベンチに腰をおろしていた際、暑さに追い立てられるように近所のコンビニへ走り、アイスを買って戻った。友人が買ってきた「アイスボックス濃い果実氷<巨峰>」という、ぶどうの果汁をそのまま細かい氷にしたようなやつを少しもらってその美味しさに驚いた。「アイスボックス」シリーズは子供の頃から好きではあったが、この「濃い果実氷<巨峰>」は味の濃厚さ、氷の食感も今までのものより格段に進化した気がする。シャリシャリとかみ砕きながら、「ああ……これで焼酎を割ったらうんめえだろうなぁ」とぼんやり思った。
今回はその「アイスボックス濃い果実氷<巨峰>」を含む3種のアイスでキンミヤ焼酎を割ってみた。まずは、絶対的な確信を抱いていた森永の「アイスボックス濃い果実氷<巨峰>割り」である。円筒の容器から、グラスにジャカジャカと中身をあけ、そこに焼酎を注ぐ。ここで気を付けて欲しいのは焼酎の分量だ。 “シャリキン”といって、キンミヤ焼酎を事前に凍らせておき、そこに割りものを注ぐという飲み方があるが、そのイメージでアイスボックス割りを試すと、キンミヤ焼酎の海の中に紫色の氷が浮かぶような見た目になり、グイッと飲むと一気に酩酊するようなアルコール濃度になる。アイスボックスの氷をグラスに入れた際、焼酎はその半分以下ぐらいの水位にしておいて、かき回して溶かす感じ。じゃないとすごい酔います。何度かの失敗を経てようやく良いバランスで作ることができ、もちろん美味しかったのだが、氷が美味しすぎてその氷をほお張ろうとするとグイグイ焼酎が口に流れ込んでくるという仕組みになってしまい、一気に飲んでしまった。危険度は高い。
次に明治の「エッセル スーパーカップ チョコミント」で焼酎を割ってみた。割るというか、アイスをスプーンですくいとってグラスに入れ、上から焼酎をかけて、かき回すという感じ。チョコミントのアイスがすごく好きで、焼酎もすごく好きなので、好き好きドリンクができると思ってワクワクしつつ飲んだが、焼酎の苦味がものすごく強調される仕上がりに!うげえーこうなるのか。辛うじてミントの香りが残る後味はまだいいとして、なかなかにエグイ味になってしまった。
最後は「ハーゲンダッツ ストロベリー」だ。アイスの王様ハーゲンダッツ。中でも私はストロベリー味にその真価を見る。何度食べても感動がある。子どもの頃から大好きで、でも滅多に食べられなかったアイスに今、なぜか焼酎をかけてかき回している。あの頃の未来に僕らは立っているのかな?結果はこちらも苦味がグーンと際立ってしまってダメ!スイカに塩かけると甘みが引き立てられる、あれの逆の理屈でアルコールの味わいが引き出されてしまう。美味しいもので割ればいいってわけじゃないから難しい。「ハーゲンダッツ割り」って何度も言いたくなるぐらい、語感は最高なんだけどなあ。(初出:ミュージックフリーペーパー『UNGA!』No.168)
(X/tumblr)
1979年生まれ水瓶座・A型。酒と徘徊が趣味の東京生まれ大阪在住のフリーライター。WEBサイト「デイリーポータルZ」「集英社新書プラス」「メシ通」などで執筆中。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーで、ことさら出版からはbutajiとのユニット「遠い街」のCDをリリース。大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』、『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』(共にスタンド・ブックス)、『「それから」の大阪』(集英社)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』(新潮社)。パリッコとの共著に『酒の穴』『酒の穴エクストラプレーン』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)、『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)。
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