「大衆酒場」に対義語があるとしたら、それはひょっとして「スターバックス」じゃないだろうか。なぜ?と聞かれたらなんとなく、としか答えようがないのだが……。その場にいる人々の顔を思い浮かべて欲しい、大衆酒場にいそうな人がスタバにいる姿って思い浮かびますか?
まあいい。とにかく、私は普段あまりスタバに行くことがない。ただ、数少ないスタバ経験を思い起こせば、飲み物が異常に美味しかった記憶ばかりがよみがえる。緊張しつつオーダーした「キャラメルマキアート」を一口飲んだ瞬間のあの驚きよ。こんなに美味い飲み物が他にあるだろうか、と思った。
にも関わらずなぜか敷居の高さを感じで足が遠のいていたのだが、今回この連載をきっかけにして自分がスタバと大衆酒場の架け橋になれるんじゃないかと思ったのだ。
前置きはやめだ!要するにキンミヤ焼酎をスターバックスのドリンクで割ってみることにしたのだ。
近所の酒屋でキンミヤ焼酎を購入し、リュックに突っ込んで大阪・梅田にあるスタバへ向かった。あまりに久しぶりでほとんど初めてのような緊張感で、店内へ。店員さんがみな女性だったのだが、やけにみなさん美人だ。それがまた緊張を強いてくる。あと、トールとかショートとか今いちサイズがイメージできないんだよなー。なんとかがんばって昔飲んで美味しかった「キャラメルマキアート」と「コーヒーフラペチーノ」をオーダーした。
ほどなくして手渡された二つのカップを手に、店内をウロウロしてみたが、満席状態で座る場所がない。まあ、あったとしてもおもむろに焼酎の瓶を取り出すわけにもいかないかと思い、店外へ。近くの広場で、早速検証開始だ。まず、どちらのドリンクも、カップのふちスレスレまで中身が入っているので、焼酎を足すためには飲んで減らす必要がある。なので飲んでみたところ、どちらの飲み物も鳥肌が立つほどうまい。何これ。焼酎とか入れる必要まったくないでしょ……。
しかし心を鬼にしてフタを開け、我らがキンミヤ焼酎を一気に注ぎ込んだ。このシーンさえ人に見られなければ、ただ公園で優雅にスタバを飲んでるスマートな男性にしか見えまい。フタを閉じれば、はい、完全犯罪。まずは「キャラメルマキアート」から飲んでみる。うわ……うまぁ。アルコールのクセが完全にコーヒーのコクとほんのりした甘みに吸い込まれて消えている。キンミヤが消えちゃった!
次に焼酎の「コーヒーフラペチーノ」割りを。こっちはもう、さらにアルコール感がなくなって、純然たるただの美味しいスタバの飲み物である。フローズンなシャリシャリした食感が暑い季節に心地よく、キンミヤを冷凍庫で凍らせて作るいわゆる「シャリキン」より断然こっちじゃないかと思った。むしろ、何も入れずに飲むよりも、焼酎のほんの少しの苦味のおかげで味わい深さが増したようにすら感じる。
スターバックスさん、もしこのコーナーを読んでいたら「キンミヤフラペチーノ」をメニューに採用していただけないでしょうか!それが実現したら私はスタバに毎日でも通います!(初出:ミュージックフリーペーパー『UNGA!』No.167)
(X/tumblr)
1979年生まれ水瓶座・A型。酒と徘徊が趣味の東京生まれ大阪在住のフリーライター。WEBサイト「デイリーポータルZ」「集英社新書プラス」「メシ通」などで執筆中。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーで、ことさら出版からはbutajiとのユニット「遠い街」のCDをリリース。大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』、『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』(共にスタンド・ブックス)、『「それから」の大阪』(集英社)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』(新潮社)。パリッコとの共著に『酒の穴』『酒の穴エクストラプレーン』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)、『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)。
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