読んでは忘れて
『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』

特別編vol.9 スズキナオ初単著をたけしげみゆき・はやと・ヤマコが語る(後編)

好評発売中のスズキナオさんの初単著『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)が早くも3刷!書評連載「読んでは忘れて」の特別編として、スズキさんに縁のある方々が登場する企画の最終回。スズキさんの取材記事によく登場するあの三人衆=たけしげみゆきさん、「はやと」ことはやとちリミックスさん、ヤマコさんにお話を伺った鼎談記事の後編をお届けします。正真正銘のラスト!

「シカクで飲むお酒は美味い」

『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』 前編より続き>――続いては、みなさんがスズキさんの取材に同行するときについて聞かせてください。参加するときは「こんな取材で」と依頼が来るんですか?

たけしげ LINEかTwitterのDMで誘われて、シカクか居酒屋に集まります。

ヤマコ 遠くに行く取材は事前情報が必ず来ますけど、食べ比べ系の記事とかだと、気持ちとしては取材というより飲み会だと思って行くこともありますね。

――やっぱり誘いが来ると嬉しいですか?

たけしげ もちろんですよ。

ヤマコ ソワソワします(笑)。

はやと 普段本当に一人で酒も飯も食わないから、ナオさんと飲むとき以外まともなもの食べないので…

※普段のはやとさんの食生活についてはこの記事をご参照ください。トップ画像にもフィーチャーされている冷蔵庫と豆腐は、2年以上経っても酒の穴の記事で振り返られるほどの衝撃を一部シーンに与えた。

ヤマコ 生命維持に欠かせない。

はやと 定期的に会わないとマズいんですよ。ハハハ!

――みなさんに1か月会わないと、はやとさんは1か月豆腐とコーヒーだけになっちゃいますもんね。

はやと だから感謝してますよ。

――一度、飲みに誘われても豆腐とコーヒーだけで一月くらい過ごしてみてほしい気もします。

はやと 居酒屋でも豆腐だけ(笑)。

たけしげ でも不思議なのが、日頃豆腐とコーヒーだけなのに、ナオさんと合うときはガッツリ居酒屋メニュー食べてお酒も飲むんですよね。よくお腹壊さないよなあって思います。

はやと 自分でも不思議で、次の日会社でも全然飲みますもん。でも、それを言ったらヤマコットさんも次の日仕事でも、必ず参加してお酒も飲みますよね。

ヤマコ いやまあ、飲み会は楽しいじゃないですか。

はやと あと、よく言いますよね、「シカクで飲むお酒は美味い」って。

ヤマコ そうなんですよ。

はやと いや、それは、僕もわかります(笑)。

ヤマコ 特別なんですよ。

はやと 本当にシカクがあってよかったです。

たけしげ いやあ、ありがたいですね。そう言ってもらえて(笑)。

ヤマコ 僕、始業が遅め、10時の会社なので、夜遅めに飲んでも他の人よりも楽ちんなんですよ。でも本当にシカクで飲んだ後は、二日酔いにもなりにくいですし(笑)。

たけしげ そんなパワースポットみたいな。

ヤマコ 薬機法に抵触しない程度に訴えていきたいですね。

たけしげ スタンドシカク、二日酔いしないか、はやとさんとヤマコさん以外にも聞いてみたいですね。あとお酒の味も(笑)。

「読んでは忘れて」特別編vol.9・後編
シカクとナオさんがいて、本当によかった!

ヤマコ 取材じゃなくてシカク飲みの話になってますが、当のナオさんはスタンドシカクにそんなに来ないんですけどね。

たけしげ そもそもスタンドシカクは、酒処ナオがあんまり開催できないから始まったんですよ。だから、さっき言った酒担当の責任感の話(前編参照)、そんなに気にしてくれてるんなら、もっとスタンドシカクに来てくれるか、酒処ナオをしてくれればいいのにと(笑)。

ヤマコ 確か2・3回くらいの参加じゃないかな。

たけしげ スタンドシカクが大体金曜夜なので、家の用事とかもあると思うですけど。ただナオさんって、基本「自分がいなくていい場所」にはあんまり行かないですよね。大人数の飲み会とか。

はやと ああ、確かにそうかもしれない。

――そうなんですか。自分が主張しない記事を書くスズキさんの自意識的な話がようやく?

たけしげ ナオさん、4人か5人以上いると、自分がしゃべらなくても話が回るから、しゃべらなくていいってよく言うんですよ。スタンドシカクはナオさんからすると、人が多すぎるのかなと。

ヤマコ スタンドシカクはテーブルも別れていて、いろんなシマがある中でシカクのスタッフとしてうまく振る舞うのは疲れるのかも。ナオさんのファンもいるでしょうし。出版祝いに胴上げしたい人もいますよね。

――それはいるでしょう。今度胴上げシカクやりましょうか。

たけしげ すぐ終わる(笑)。

――胴上げメインの、胴上げシカクfeat.酒処ナオで。

ヤマコ 本当に胴上げしたい気持ちですよ。昨日の取材に同行したときも、何回も本の出版を祝して乾杯しました。

※シカクの一角で行われていた立ち飲みイベント「スタンドシカクは」は、前編でも話題にのぼった件を経て、現在はしばらくお休みとなることが決まっています。代わりに「シカクのミニコミ夜会」を実施するなど、夜営業とそれに伴うイベント開催は継続中。美味しいお酒を飲みたい方は、マナーを守ってスタンドシカクの復活を待ちましょう。

たけしげ でもこの本素晴らしいけど、スタンド・ブックスの森山さんの編集が光ってますよね。章構成もすごくいいし、本文の下に写真を入れるのも見やすいし。ナオさんの記事を集めて本にするの、私も考えたんだけど、取材記事のベクトルがバラバラだから。

――本を貫く軸を考えるのが難しいですよね。さすがの仕事だと思います。

たけしげ このまとめ方をできる人が出してくれてよかったな、って思いました。

ヤマコ Webの記事だと、頭にヘッダー画像的なものがあってから文章じゃないですか。この本は、すーっと頭から文章が始まるところが「本になったなあ」って喜びがありましたね。

――私も「読んでは忘れて」でスズキナオ初単著を出したい。シカク出版はそのライバルだ―という思いがあったのですが、この本がスタンド・ブックスから出てくれて本当によかったです。

たけしげ ですね。あと私たち以外にも、変なところから出ちゃったりしたかもしれないですから(笑)。

はやと ナオさん、変な出版社の話には乗らないでしょ。

たけしげ うーん、意外とナオさん、「やりますやります」って言っちゃうほうだと思いますよ(笑)。

スズキナオの取材で起こるミラクル

――話をスズキさんの記事に戻しましょう。「よく登場する」と言っておいてなんですが、『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』でみなさんが勢揃いしているのは「スーパーの半額値引き肉だけで半額焼き肉パーティー」「カップヌードルに入れるとおいしい“漬け物”を検証」の2つ。意外に少なかったですね。旅行記事に比べると少し地味かもしれませんが、まずはこの取材から振り返ってみていただけますか?

たけしげ あ、でも焼き肉のほうで、私ナオさんの持つミラクルに浴させてもらってます。銀シャリの鰻さんに会えたんですよ。記事には出てないかな?

ヤマコ たけしげさんがテレビの取材を受けて、今後放送される予定らしい、みたいに軽くこすってたと思いますね(編注:元記事にその旨が記載。本には未収録)。

たけしげ でも放送はされなかった。自転車で通り過ぎる姿は一瞬映ったんですけど。

はやと あ!それ見た気がする。

たけしげ ナオさんのおかげで。今でもスーパーに行くたび思い出しますもん。

はやと そんなに(笑)。

ヤマコ 半額の肉で焼き肉パーティーをするという話に結構食いついてきたらしくて。テレビも面白がるような企画だったんでしょうね。

たけしげ そのとき、「めっちゃ面白いですやん。僕らも行っていいですか?」って言われたんだけど、集合時間が夜の10時だったんです。そう伝えたら「じゃあ無理やわー」ってなって。集合時間がもっと早かったら、記事に鰻さんが登場していたかもしれない。

――すごいなあ。さすがですね。

たけしげ あと、焼き肉は終わってからみんなでゲームしたのが楽しかったですね。

ヤマコ そうそう、始まりが遅かったので、シカクにお泊り会だったんですよね。

たけしげ 始発の時間までみんなで。

ヤマコ スーファミのドカポン王国(ランド)やりましたね。

――めちゃくちゃ喧嘩になるゲームじゃないですか

参考記事。やろうと思うとめちゃくちゃ性格の悪い妨害をできるゲームなのです。

ヤマコ そうです。でも、そのゲームをめちゃくちゃ仲良くやりましたね(笑)。あと、前ツイートもしたんですけど…

ヤマコ ナオさん一人でゴルフゲームしていたり。あれも半額焼き肉のときやったなあと思っていましたね。

スズキナオとゲーム

たけしげ ナオさんは相当ゲーム好きだと思います。前シカクで社員旅行行ったとき、ビロくんがファミコン持ってきていて、ずっと二人でゲームやってました。みんながお風呂行ったり、自由時間的なときにやるならわかるんですけど、全員でご飯食べてお酒飲んでワイワイするときすらもゲームやりたがってました。

はやと そんなに!?

たけしげ 日頃読みすぎるくらい空気読むナオさんが、あそこまでゲームやりたがるのかっていう。それだけ好きなんでしょうね。

――人間・スズキナオ的なお話が出てきましたね。

たけしげ 取材で1時間くらい時間をつぶす必要があるときも、結構ゲームセンター行きますね。一応二人でできるゲームを探してくれるんですよ。で、ナオさんはスポーツ系が好きみたいで、テニスゲームとかを「これ二人でできるからやりましょうよ」とか言ってくれるけど、大体私はすぐ負ける。その後は1Pモードに突入して、ナオさんがやってるのをずっと見てるっていう。最初は気をつかってくれるけど、その後は強いからずっとコンピューターにナオさんが勝ち続けるのを長々見るという(笑)。

はやと それって最新のゲーセンでも行くんですか?

たけしげ 選択肢がないときは行くけど、どっちもあったら古いお店に行きますね。

はやと そんなにゲーム好きだったんだ。

ヤマコ それこそ、みんなでジャンボフェリー乗ったとき、中のゲーセンでファミスタやってたじゃないですか。

はやと そうかあのときも(笑)。

ヤマコ スポーツゲームを。

「読んでは忘れて」特別編vol.9・後編
ジャンボフェリーのゲームコーナー。いい笑顔!

たけしげ そういえば、一回私が麻雀欲が高まっていた時期があって。麻雀は頭数がいるけど、当時のシカク店長もできたので、最低三人いればできるからナオさんを誘ったんです。そうしたら「僕はそういうので負けたら、本当に怒っちゃうのでよくないから、やらないようにしてるんです」って言ってました。ゲームに関してだけは、本当に負けず嫌いみたいで。

はやと そんなになんだ…。

たけしげ だから、本当に好きなんだけど、ちょっとの空き時間だけゲーセンでやる程度にしてるんじゃないでしょうか。家で好きにやっていたら自我が崩壊しちゃうんじゃないかと(笑)。

――確かに、スプラトゥーンにはまっているときに、はまりすぎている自分に対する懸念のような描写が日記でありましたね。そんな我を忘れるスズキさんも少し見てみたいです。

はやと 1日ゲーセンで思う様遊んでほしいですね。

――そういえば、ゲーセンって結構お金を食いますよね。それでも行くのって、よほど好きなんでしょうね。

たけしげ 私が同席するときって、1回2回で終わる程度ですよ。昔は相当やり込んだんでしょうけど。

――でも、日頃から100円200円を大切にされているじゃないですか。

たけしげ 確かに(笑)。お酒代なんかで考えたら、大枚を叩いているのかも。ほんまですね。

「読んでは忘れて」特別編vol.9・後編
なんだか意外だなあと思っていたのですが、ことさら出版が2015年にスズキさんと大阪で会い、特に目的地もなく鶴橋あたりをうろついていたときにゲームセンターに入店&テニスゲームをやっていました…!全然憶えてなかった。

ヤマコ そうだ、この前のガチャガチャ飲み会でも、100円を機械に入れる勢いがよかった。「そりゃー!」みたいな。リアル100円でやっていたし。

※デイリーポータルZで公開中の「ガチャガチャマシーンからつまみが出てくる飲み会を開催してみた」。

――ゲーセンのときの感覚になっていたのかも。

たけしげ というより、本当にゲームみたいな感覚で、「こいつらよりいいつまみ出してやるぞ!」って思っていたような(笑)。

ヤマコ 結構駆け引きもしてきてましたもんね。

たけしげ 「次何が出てもトレードしましょう」って。「ギャンブル要素を入れよう」って。

ヤマコ ニヤッとしてましたもんね。でも、鮒ずしでやっつけてやりましたよ(笑)

※上記ガチャガチャ飲み会記事のハイライト。ヤマコさんが持ってきた滋賀の大津の朝市で買った高級鮒ずしを引き当てるも、鮒ずしが大の苦手のスズキさん。思い切って食べてみたけど…。

――確かにゲームと思って、本気になっていた感じがありますね。あと、いいものをすっと入れてくる辺りにヤマコさんらしさを感じます。

ヤマコ 飲み会でもあったので、自分が食べたいものを持ってきた感じです。

はやと ああ、僕もナオさんの取材は全部飲み会だと思ってるところがありますね。

ヤマコ それが良いことか悪いことかわからないけど(笑)。

――しかし、持ち寄ったつまみの中に、スズキさんが苦手なものが含まれて、それを引き当てるのもミラクルですよね。もう一方の、カップヌードルのほうはどうでしょうか。

ヤマコ これ、あんまり憶えてないんですよねえ。

――では、もう少し話を広げて、このような食べ比べ系の企画の場合、みなさんは完成記事のことを意識されたりするんですか?

ヤマコ 考えないわけではないんですけど、カップヌードルの場合、漬け物はナオさんが全部用意してくれてましたね。47都道府県のポン酢を食べ比べる記事に端を発して、「ナオさんが用意するシリーズ」が結構続いていたような。

――なるほど。元々は採点役として呼ばれて、みなさんが持ち寄る記事のほうが少ないんですね。採点するときはどんな気分でしたか?

ヤマコ めちゃくちゃ真剣にやってましたよ。

はやと なんか全国ポン酢飲み歩き協会の方も見てるらしい、とか言われて。

たけしげ そうそう、だから真面目にやらないと、って。あと私だけかもですが、記事に出してもらえるのが嬉しいので、内容のある発言をしようと考えちゃいますね(笑)。もちろん嘘は言わないけど、単に「美味しい」とかじゃなくて「酸味があって」とか情報を入れようと。

ヤマコ 考えてみると、漬け物のタイミングは、初期の気合の入ってる時期と、最近のゆるゆるの時期の谷間なんじゃないですか。ガチ真剣から抜けてきているけど、緊張感がないわけでもなく。

――もしかしたら、その頃はスズキさんも記事の着地点を想定していたり、そこに持っていこうとする考えもあったのかもしれませんね。

ヤマコ 全部ナオさんが用意していたから、何か流れを考えていた可能性はあるかもですね。

――この漬け物が優勝だろう、的な。

ヤマコ あ、そういえば僕、その頃は翌日に感想をテキストファイルで清書して送ってましたね。今はようできない(笑)。

たけしげ あの頃はヤマコさんもナオさんの記事に出たばっかりだったから(笑)。

――ヤマコさんはヤマコさんで気合が入っていたんですね(笑)。

旅先でも起こるミラクル

――先ほど、ゲームセンターで時間をつぶす話がありましたが、たけしげさんはクレジットを出していないけど、カメラマンとして取材に同行されることも結構あるんですよね。特に印象的なエピソードというと、何になるでしょうか。

たけしげ 誘ってもらったとき、暇があったら大体行っているので、同行している取材は多いです。本に入っているのも。誘い文句がいちいち「え、そこ行きたいんですけど!」と思うところばっかりなんですよ。三重のロンク食堂(※P159~三重の離島にある「ロンク食堂」で旬の魚とゆるやかな時間を味わう)は特に印象に残ってるかな。

――素晴らしい記事でしたね。

たけしげ アポは取っていたみたいなんだけど、ふらっと行った感じで。ロケーションもすごくよかったんですけど、神社の境内で梛(なぎ)の木の葉っぱをもらったり、ロンク食堂で、今島に住んでいない昔の常連さんがたまたま来ていて、その方が島の駐在所に長く務めていた警察官の奥さんで、島の人しか知らないエピソードを教えてくれたり。

――剣道の話、すごかったですね(※ぜひ本でご確認ください!)。偶然とは思えないです。神様がスズキさんのために仕込んでいるんじゃないかと思うくらい。

たけしげ 岸さんの帯のまんまなんですけど、ナオさんのいる感じが、多分めっちゃちょうどいいから、古い常連さんも異質な存在だと感じず普通に受け入れちゃうし、普通に昔話をしちゃう。言葉にできない安心感を覚えるんでしょうね。そのおかげで私もいろんな話を聞かせてもらえるんだろうなあ、と思ってます。

「読んでは忘れて」特別編vol.9・後編
スズキナオのいるところが、ホームになる。

たけしげ あと、やっぱり好奇心がすごい。私がそこまで気にならないことでも食いついて聞きますね。この本には載ってないんですけど、たとえばバス居酒屋の92歳の常連“会長さん”の話を聞いてて、「毎年誕生日もここで祝ってんねんで」みたいな話になったとき、ナオさんは「すごいですね!そのときの写真とかないんですか?」って聞く。そうしたら、写真どころかビデオが出てきたり、常連さんの寄せ書きが出てきたり。ナオさんはそれを喜びながら写真めっちゃ撮ってるし。

※「バスの中で営む居酒屋「千両」でしみじみ飲んだ」。掲載元のRettyグルメニュースが更新を終了しているため、もしかしたら見られなくなってしまう可能性も。未読の方はぜひこの機会に!

はやと ハハハ!

たけしげ 私は正直、見ず知らずのおじいちゃんの誕生日の話とか、そこまで食いつけないんです。もちろん、その場でナオさんが引き出すエピソードを見聞きすると「すごいな!」と思うけど、「私が一人でこの場にいたら、ここまで食いつけるか?」とも感じる。誕生日の様子を収めたビデオも、1時間半フルで見てるんですよ(笑)。

一同:(笑)

たけしげ 面白いけど、何かがあるわけでは(笑)。固定カメラで居酒屋の中を映してるだけだから。

はやと ナオさんも止めどきがわからなくなってたんじゃないですか(笑)?

たけしげ いや、結構喜んで見てましたよ。人に対する関心がものすごくあるからこそ、その人の好きなものなんかをどんどん掘り下げられるし、相手も嬉しくてどんどん話してくれるんだと思いますね。

ヤマコ そういえば、ナオさんとしゃべっていると、「ねっ」って相づちを入れて話し始めること、多くないですか?あれも、こっちから話しやすくなる、呼び水になっている気がするんですよね。男の人で「ねっ」って言う人は少なくて、スズキナオっぽいと思います。昨日も取材で「ねっ」から新しい話題が引き出されてて。

たけしげ そうか、「ねっ」って同意でもあり、共感でもありますもんね。

ヤマコ ええ。だから上手だと思うんですよね、あれ。

――なるほど。スズキさんの「ねっ」、脳内再生できます。ただ、スキルだけでは説明できない、神に愛されている部分もやっぱりある気がしています。私、バス居酒屋の記事を見て本当に驚いたのですが、以前スズキさんと入ったスナックで、数年前の話なので千両の会長さんとはお歳が違うんでしょうけど、92歳の“会長”と呼ばれている常連さんに居合わせたことがあって。“92歳の会長”に複数の飲食店で遭遇するなんて…!

たけしげ いつか、もう一人92歳の会長が現れたりするかも。

ヤマコ 「92歳の常連の会長を探す」って記事をあえてやってみたり(笑)。そういえば、深夜高速バスで、隣席が空いてると自然と神に感謝したい気持ちが起こる、っていう描写ありましたね。

――その御利益があるのかも。

たけしげ いや、この本にもっと、ナオさんが感謝してる対象は出てくると思いますけど(笑)。

――そうですね(笑)。スズキさんは人間の生活を、決して特別視していないけど、神聖視しているような気がします。

たけしげ「少し人生が楽しめるようになるかもしれない」

――それでは、いろいろと脱線もしてしまったので(笑)、最後にあらためて『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』について、一言ずついただいてもよいでしょうか。

たけしげ そうですね…、今、結構生き辛さを抱えている人も多いと思うんだけど、「自分の人生つまんないなあ」と思っている人が読んでくれたら、少し人生が楽しめるようになるかもしれないので、たくさんの人に読んでほしいなと思います。

はやと この本、何年分だろう、スズキナオのベスト盤ですよね。つまりライターとしてのスズキナオの1stアルバムであり、ベストアルバムでもある。1stらしく「ミスったな」って曲が2・3あるかもしれないけど、それ以上にベストアルバムとして確実にまとまってるので、大丈夫、読んで大丈夫です!

ヤマコ 僕、だらだらと時間をかけて読んだんですけど、多分一気にも読めるくらいテンポもある。ただどちらかと言えば、ゆるゆると読むのが合うと思うんですよね。だから、用法・用量を守って読んでいただければ。

――ありがとうございました!

たけしげみゆき
たけしげみゆき
Twitternote

インディーズの本やミニコミ誌、CD、雑貨などを販売する大阪の書店「シカク」の店長。酒の穴『酒の穴』などを出版しているシカク出版、チミドロのアルバム『なのかな?』をリリースしたシカクオンガクの代表も務めている。
はやとちリミックス
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スズキナオの食べ比べ系記事や旅行記事などに「はやと」としてたびたび登場するロックンロールクレイジーボーイ兼会社員。宅録系パンクロックミュージシャン「はやとちリミックス」として1stアルバム『はやとちリミックス』をリリース。スズキ氏とも関わりの深い大阪の書店「シカク」にて発売中
ヤマコ
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飲酒家兼シカクの常連兼会社員。その酒センサーの鋭さと、酒の穴の二人のメディア情報・イベント情報の網羅ぶりで一部好事家(主にことさら出版)より関西若手飲酒シーンの最終兵器と目されていたが、ロフトプラスワンWESTで開催された「この居酒屋がヤバい!」にて出演者側デビューを果たし、2020年8月5日発売の酒の穴が監修する新しい飲酒と生活の本『のみタイム』(スタンド・ブックス)では文筆家デビューを果たしている。

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