計算したらもう日本語ラップを聞き出して25年ぐらい経ったわけなんだけど、25年って長いわよね…。 あの頃生まれた子供がもう大人。あの頃建ったマンションがもう築25年。当時20歳だったらもう45歳なわけよ。
つまりあの頃若手だったラッパーは中堅を超えてもうベテラン。当時ベテランだった人達は大ベテラン。
そういえば亡くなるミュージシャンも増えてきたわよね最近。
で、25年聴いてきてわかったのは日本のヒップホップの世界で一番難しいのは結局「続ける事」よね~…ってつくづく思うわけよ。
昔あんなに話題だったり人気があったラッパーやDJもいつの間にか曲を出さなくなったり辞めちゃったりするわけよね。
でも他のジャンルでもそうだと思うけど、音楽でずっと食っていける人ってほんの一握りだからこればっかりはしょうがないわ。
みんな仕事が忙しかったり家庭の方を大事にしてたり、仮に出しても別に売れもせず話題にならないから活動続けても…っていう人がほとんどだと思うの。
なので25年聴き続けて辿り着いた結論として「それでも曲を出すべき!」とは全く思わないって事よ。
出せなかったら出さなくてもいいし、出せそうならいつでも出していいわ。
で、そんな中で驚異的とも言える位ずっと曲を出し続けてる異例のラッパーがFREEZよ。
ベテランリスナーなら勿論ご存知、伝説的グループ「ILL SLANG BLOW'KER」や「RAMB CAMP」「EL-NINO」「INGLORIOUS BASTARDS」等数々のグループで2000年代初頭頃から精力的に活動してきた福岡・親不孝通りを代表するベテランよね。
福岡ヒップホップらしい、ぶっとい音楽性とユーモラスかつ天才的なリリックにも定評があるまさにB-BOY!って感じの信頼できるラッパーよ。
2012年頃からソロ活動も始めたFREEZなんだけど、すごいのが何だかんだでずっっっっと曲出してるのよね。
特に配信が主流になり始めた辺りからすごいわ。シングル曲とかユニットの曲とかリミックスとか、とにかく出す出す。
決してラップ界で突出して有名なラッパーってわけでもないんだけど、このFREEZのラフかつタフな活動の仕方は見習うべき所があると思うわ。
そして肝心の内容なんだけど、やっぱり出し続けてるだけあってものすごく深い領域に行ってるというか、最新アルバムの『メイビー・ハッピー』では辛さも苦しさも楽しさも全部含めた自分の今の「人生」ってものを驚くほど真正面からラップしてて。
やっぱり日本のヒップホップが辿り着くべき場所もここじゃないかと思うのよね。
まさに生きるHIPHOP。みんなFREEZの生き方を目指すべきよ。(2023年12月初回限定盤CDリリース)
限られた時間の中でホンモノの夢を見るんだ 老いてく母ちゃん ダウン症の息子 喧嘩の示談金 裁判費用 タダで売ってた俺の才能 トイチで取り立てる南の帝王 だけど当然忘れん人情 ウシジマ君が売れる世界でも COLD WORLDを熱くする HOTなVERSEをDROPしてく
昔デヴラージが言ってたように さっさと配信しなNEW SHIT HIPHOPは新鮮なうち お前の考えも変わってくから 今の気持ちを吐き出しな
俺の引退作はもうできてる DREみたいに先を見すえてる それまでは付き合って欲しい 誰よりも愛する嫁みたいに(「俺の家の噺」)
長い長い夜を超えて 新たなARTがまた産まれてく 生きてるだけでそういや幸せ あっという間に過ぎ去る人生(「花と金」)
『メイビー・ハッピー』(通常盤)通販サイト
Amazon/HMV/TOWER RECORDS/WENOD RECORDS
(X/PIXIV FANBOX)
1982年、岡山県出身。2004年、『未来は俺等の手の中〜J.P. STYLE GRAFFITI〜』で、第67回手塚賞準入選。著書に『魔法の料理 かおすキッチン』全3巻、『ダークアクト』全1巻、『今日のテラフォーマーズはお休みです。』全6巻(全て集英社)。現在は「COMIC OGYAAA!!(コミックオギャー)」で『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』を連載中、単行本はseason10まで刊行中(ホーム社)。2017年に6代目作画担当に就任した「日ペンの美子ちゃん」の公式Twitterに掲載された漫画の単行本『6代目 日ペンの美子ちゃん』(一迅社)も発売中。
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