美ー子ちゃんの今週の一枚
MOUSOU PAGER『BEYOND THE OLD SCIENCE』

第24回 MOUSOU PAGER『BEYOND THE OLD SCIENCE』

MOUSOU PAGER『BEYOND THE OLD SCIENCE』全日本語ラップリスナーの中のごく一部の変態日本語ラップリスナーは確実に待ち望んでいたであろう、MOUSOU PAGERの1stアルバムがついにリリースされたわ!
日本のラッパーもどんどんトラップに向かってく時代の中、あえてのこの徹底した(なつかしい)ペイジャー感、いなたい音といなたいラップ、使ってる機材へのマニアックなこだわり、存在自体がBボーイの古き良き変態性をうかがわせるわ。
サブスクの時代かつトラップの時代になって「曲」っていかにサクッと作ってサクッとリリースするかが重要な感じになったというか、「渾身の一枚のアルバムを振り絞って作ってもバズんなかったらハイ、終わり。次。」みたいな空気が強まってきたと思うのよね。

そんな中で物凄く特異な存在っていうか、音楽界やHIPHOPの流れとはある意味無関係なこのMOUSOU PAGERがにわかに評価されてるのは意義深いと思うわけよ。まずみんなアルバムの曲数減ってきてる時代に、ちょっと曲数多いし。

「曲げわっぱ」ってあるじゃない?

あの秋田とかで有名な、職人が一個一個作る手作りの弁当箱。
今の時代って食事もいかに効率化するかが一部の世界では重要とされてて、ウーバーイーツとかそれこそ完全栄養食なんてものまであるじゃない?あの、飲んでたら絶対病気になりそうな変な液体の。

でも逆に「曲げわっぱ」って今の時代に流行ってるわけよ。
弁当箱なのに高いやつだと1万円以上するし、使う前に濡らさないとご飯がくっついちゃうという面倒さもあるのに、だからこそ曲げわっぱがイイっていう人達がいるわけなのよ。
やっぱりこの「こだわってる感」って価値があると思うのよねいつの時代も。
「こだわってる人が作ってる感」と「こだわってる人が作ってるものをこだわって使いたい感」両方とも。

この「こだわり」って現代の高速価値消費社会、SNS的バズ重視社会だと無意味ぐらいに捉えられていたと思うんだけど、そんな中でMOUSOU PAGERがウケてるのを見ると「やっぱこだわるって大事!」という大事なことを思い出させてくれるわ。(2020年6月配信リリース)

「美ー子ちゃんの今週の一枚」第24回

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服部昇大
服部昇大
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1982年、岡山県出身。2004年、『未来は俺等の手の中〜J.P. STYLE GRAFFITI〜』で、第67回手塚賞準入選。著書に『魔法の料理 かおすキッチン』全3巻、『ダークアクト』全1巻、『今日のテラフォーマーズはお休みです。』全6巻、現在「スピネル」にて連載中の『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』1~4巻(全て集英社)など。2017年に6代目作画担当に就任した「日ペンの美子ちゃん」の公式Twitterで発表された漫画を集めた単行本『6代目 日ペンの美子ちゃん』(一迅社)も発売中。

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