『REVOLUTION』に続く徳利の二枚目のアルバム『EVOLUTION』がついに出たわ。
ジャケットからしてインパクト抜群というか「どういうアルバム!?」とリスナーを困惑させる事間違いなしなんだけど、意外にエモい所もあった前作と比べると本来の徳利らしい自分の感情によりプリミティブなアルバム…っていう感じ?
徳利の楽曲って意外とアーティスティックっていうか、持ち前のポップさとピックアップする言葉のセンスの独特さで独特の世界観を作り上げるタイプだと思うんだけど、今作ではよりシンプルでキレの良い曲、つまり一般人にもわかりやすい曲に果敢にトライしてると思うのよね。
そのシンプルさはとにかく目を見張るものがあって、例えばスーパーで買い物をして自分のチャリの前に人のチャリがあった時の気持ちを歌った曲「チャリ」。
フックのしつこいぐらいの「俺のチャリの前にチャリ止めるな」連呼、そこからクライマックスに向かって「まーいろいろあるんやろう 人それぞれ わかるわかる もういい 許す許す」と冷静になった後、更に「でもやっぱり俺のチャリの前にチャリ止めるな」連呼に戻る所なんて吉本新喜劇を代表するギャグ「乳首ドリルすんのかいせんのかい」のような不条理な美しさを感じるわ。
このシンプルさは一貫していて、他にも「いくぞ」という気持ちを歌った曲「いくぞ」。
新曲を作ってる気持ちを歌った曲「新曲」。
絶対できるという気持ちを歌った曲「絶対できる」。
家系ラーメンが食べたい気持ちを歌った曲「IEKEI」。
高校生が朝起きたら35歳になってたという斬新なシチュエーションを歌った曲「高校生」。
びびるわよね。
全体的に曲もサクッと短い曲が多く、心が震え上がるようなヒップホップクラシックには多分ならないだろうけど10曲中10曲全てがTikTokで爆発しそうなポテンシャルを秘めている、すごい可能性を秘めたアルバムになってるわ。
正直、いつどこから火がついてもおかしくないわよ。
今回の徳利の狙いはここじゃないかと思うのよね~。
徳利がスターになる為の命運はヒップホップライターでも我々ヒップホップリスナーでもなく、TikTokユーザーの全国の女子高生の皆さんが握ってると言っていいわ!(2022年1月配信リリース)
『EVOLUTION』配信サイト
Amazon/Apple/Spotify
(X/PIXIV FANBOX)
1982年、岡山県出身。2004年、『未来は俺等の手の中〜J.P. STYLE GRAFFITI〜』で、第67回手塚賞準入選。著書に『魔法の料理 かおすキッチン』全3巻、『ダークアクト』全1巻、『今日のテラフォーマーズはお休みです。』全6巻(全て集英社)。現在は「COMIC OGYAAA!!(コミックオギャー)」で『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』を連載中、単行本はseason10まで刊行中(ホーム社)。2017年に6代目作画担当に就任した「日ペンの美子ちゃん」の公式Twitterに掲載された漫画の単行本『6代目 日ペンの美子ちゃん』(一迅社)も発売中。
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