ジャパニーズヒップホップの歴史で一番有名なDIS曲はZEEBRAがKj (Dragon Ash)をディスった曲「公開処刑」(2002)だと思うんだけど、少なくとも歴史上で5,6本の指には入りそうなぐらいインパクトと意味があったDIS曲と言えば、同じく2002年リリースのTHE BLUE HERBのBOSSがYOU THE ROCKを「日本のウィルスミス? はいはい しょせんは汚れのお笑い」とDISった曲「A SWEET LITTLE DIS」よね。
両者に因縁があったわけじゃないらしいけど、当時メジャーでTVでも人気の売れっ子だったYOU THE ROCK★を地方在住のリアルヒップホップ路線のBOSSがディスる、という構図はインパクト抜群だったわ。
そしてご存じの通り当時のTHE BLUE HERBの路線が今日(こんにち)も続く地方HIPHOP、アンダーグラウンドHIPHOPの礎となったわけよね。
そして一方みんなご存じの通り、今度はYOU THE ROCK★が2005年、2010年と連続で逮捕されちゃうわけなのよ。大麻で。
一度目の逮捕後はまだよかったんだけど、やっぱ2度の逮捕は大変みたいね。
2009年にYOU THE ROCK★が校長で日本初の日本語ラップ学校を作るっていう大きなニュースもあったんだけど、それも白紙になったのよね。
過去のインタビューに書いてあったんだけど二度の逮捕でYOU THE ROCK★は友達もめっきり減って孤独だったらしいけど、そんな中でも連絡をくれて、東京に来れば飲みに誘ってくれてたのがなんとBOSSだったらしいのよ。
そして我々リスナーが最初に驚いたのが2015年のBOSSのソロアルバム『IN THE NAME OF HIPHOP』収録の「44 YEARS OLD feat. YOU THE ROCK★」なわけよ。
あの二人が曲を!?とビビったわけよ。
そして今回さらに驚くことにTHA BLUE HERB RECORDINGSから全編O.N.OプロデュースのYOU THE ROCK★ソロアルバム『WILL NEVER DIE』がリリースされたわけ!
この、まるでジャンプ漫画のような「かつては敵だった奴が味方に」感。
ここまでダイナミックなのはなかなかないわね。
そして発売の数か月前にブルーハーブ公式からリリースが告知されて発売日を心待ちにする感。
サブスク時代になってすっかり忘れてたけど、昔ブルーハーブのブログを毎月読んでアルバムの発売日を待ってた頃を思い出したわ。
そしてそして、肝心のアルバムの内容なんだけど勿論素晴らしいわ。
YOU THE ROCK★のどう考えても山あり谷ありすぎる人生経験、これほど紆余曲折の人生観がこもったアルバム聞いたのは久しぶりな気がするわよね。
ついでに、私の注目曲はアルバム初回特典のREMIX「THINK ABOUT WHY YOU STARTED [REMIX] feat. JNKMN, ILL-BOSSTINO」!
YENTOWNのJNKMN(これもまた意外だけど熱い人選だわ)を加えてのREMIX曲なんだけど、結局最後はBOSSが熱いラップで全部持ってっちゃう所がBOSSらしいわよね~!
そう、こういう所あるわ。(2021年5月リリース)
『WILL NEVER DIE』通販サイト
Amazon/HMV/TOWER RECORDS/WENOD RECORDS
(X/PIXIV FANBOX)
1982年、岡山県出身。2004年、『未来は俺等の手の中〜J.P. STYLE GRAFFITI〜』で、第67回手塚賞準入選。著書に『魔法の料理 かおすキッチン』全3巻、『ダークアクト』全1巻、『今日のテラフォーマーズはお休みです。』全6巻(全て集英社)。現在は「COMIC OGYAAA!!(コミックオギャー)」で『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん』を連載中、単行本はseason10まで刊行中(ホーム社)。2017年に6代目作画担当に就任した「日ペンの美子ちゃん」の公式Twitterに掲載された漫画の単行本『6代目 日ペンの美子ちゃん』(一迅社)も発売中。
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