スズキナオのあまみ群島トリップ 第4回

第4回 京阪神で暮らすあまみ群島ルーツの人々

スズキナオのあまみ群島トリップ 第4回

阪神梅田本店1階の催事場・食祭テラスで2025年11月5日(水)から11月10日(月)にかけて開催される「あまみ群島ワンダートリップ2」との連動企画として、奄美大島と奄美群島の一つ、加計呂麻島をたずね、島の文化や自然を体感し、そこで暮らす人々の話を聞いてきた。また、奄美群島にルーツを持つ方々が多く住む京阪神エリアで開催される奄美群島関連のイベントに参加し、その雰囲気をじっくりと味わった。

その模様を4つの切り口で記事にまとめた。自分が感じた奄美群島の魅力が少しでも伝わるものになっていればうれしい。また、これらの記事をきっかけに、奄美群島に興味を持っていただき、「あまみ群島ワンダートリップ2」に足を運んでいただければ幸いである。


シリーズの第4回目として、2025年3月9日(土)に兵庫県尼崎市の「あましんアルカイックホール」で開催された「関西奄美会 第108回総会並びに芸能大会」と、2025年4月5日(土)、6日(日)に阪神尼崎駅前中央公園で開催された「第12回徳之島祭り」に実際に参加したレポートをまとめた。

二つの催しに参加することで、奄美群島にルーツを持ちながら京阪神で暮らす人々の姿や、そういった人々が集まって生まれる賑わいを間近に感じとることができた。

2025年3月9日に開催された「関西奄美会 第108回総会並びに芸能大会」は、関西を中心として、“奄美出身者の親睦融和を図り、合わせて郷土の振興発展に寄与すること”を目的に大正5年に結成された「関西奄美会」が主催する催しである。

2024年4月から2年間の任期で関西奄美会会長を務めているのが沖永良部島出身の先山和子さんで、その先山さんには以前、「あまみ群島ワンダートリップ」の開催に際してインタビューをさせていただいたことがある。

歴史ある関西奄美会に、女性の会長として新しい流れを生み出そうと努められている先山さんの思いについてはそちらのインタビューをぜひご覧いただきたい(https://kotosara.net/magazine/amami/003/)が、このインタビューの中でも「そのための準備が今すごく大変で(笑)」と語っていたのが「関西奄美会 第108回総会並びに芸能大会」のことだった。

この催しは(コロナ禍などの例外を除き)、年に一回開催されているもので、第1部の総会と第2部の芸能大会から構成されている。

「関西奄美会 第108回総会並びに芸能大会」が開催される「あましんアルカイックホール」の外観写真。

会場は阪神尼崎駅からほど近い「あましんアルカイックホール」

会場に到着すると、館内には奄美群島の物産を販売するコーナーなどもあり、多くの人で賑わっていた。

奄美群島の特産品などが販売されている、「あましんアルカイックホール」内の物販コーナーの写真。

奄美群島の特産品なども販売されていた

第1部では、会長を務める先山和子さんをはじめ、鹿児島県知事・塩田康一氏の代理として野下宏治氏、鹿児島県奄美市長・安田壮平氏、沖永良部島の知名町長・今井力夫氏、与論町長・田畑克夫氏、そして兵庫県尼崎市長・松本眞氏といった方々の挨拶があり、それぞれが奄美群島と尼崎市の深い関わりについて語られていた。

第2部の芸能大会が始まると、館内の熱気が一段と増した気がした。ホールのステージ上で奄美群島の人々による歌や踊りが次々と披露される。

たとえば、奄美市笠利町出身の関西在住者を中心に構成される「近畿笠利会」のみなさんが、奄美市出身の歌手・南条かつみさんの『奄美月夜』という歌に合わせて踊りを披露する。

「関西奄美会 第108回総会並びに芸能大会」での近畿笠利会のステージの様子の写真。

近畿笠利会のみなさんが踊る『奄美月夜』

その次には、徳之島の天城町にルーツを持つ方で構成される「関西天城町連合会」の方々が、尼崎市の地名が歌詞に織り込まれた『新尼崎音頭』を踊る、というように、その華やかなプログラムを見ているだけで、関西圏に奄美群島をルーツに持つ方がいかに多く住み、島の文化を大事にしながら関西の地に根差してきたかが伝わってくる。

「関西奄美会 第108回総会並びに芸能大会」での関西天城町連合会のステージの様子の写真。

関西天城町連合会のみなさんによる『新尼崎音頭』

また、その中には奄美群島からゲストとしてこの場に招かれた方々もいて、たとえば、奄美市出身の唄者(うたしゃ)・茂木幸生さんが『あさがお』を歌ったり、沖永良部島の子供たちによる「劇団えらぶ百合物語」が『えらぶ百合物語』のダイジェストバージョンを披露してくれたりと、尼崎にいながらにして奄美群島の方々のパフォーマンスを見ることができて贅沢な気分だった。

「関西奄美会 第108回総会並びに芸能大会」での劇団えらぶ百合物語のステージの様子の写真。

劇団えらぶ百合物語による『えらぶ百合物語』のダイジェスト

少し喉が渇いてきたところで、館内の物販コーナーへ行ってみる。徳之島の伝統である“闘牛”をモチーフにした、黒糖焼酎ベースのハイボール「闘牛ハイボール」が販売されていたので買ってみると、華やかな黒糖焼酎の香りと炭酸ののど越しがマッチして、とても美味しかった。

「闘牛ハイボール」の缶の写真。

会場で販売されていた「闘牛ハイボール」

物販コーナーでのじゃがいもやたんかんの写真。

徳之島の赤土で栽培されるじゃがいも「春一番」やたんかんも売られていた

その後もホール内に戻って、与論町からゲストとして招かれた「かりゆしバンド」の演奏を聴いたり、沖永良部島から来たみなさんによる伝統芸能「田皆(たみな)ヤッコ」を見たりと、奄美群島に育まれてきた文化を堪能したひとときだった。

「関西奄美会 第108回総会並びに芸能大会」でのかりゆしバンドのステージの様子の写真。

『旅立ち』という曲を演奏したかりゆしバンド

「関西奄美会 第108回総会並びに芸能大会」での「田皆ヤッコ」のステージの様子の写真。

小さな子も頑張って踊っていて可愛かった田皆ヤッコ

ラストには特別ゲストとして奄美大島出身の歌手・城南海さんのショーも披露され、会場の熱気も一際高まっていた。

その日の模様は関西奄美会の動画にもまとめられていたので、併せてご覧いただくと雰囲気が伝わると思う。

関西奄美会第108回総会並びに芸能大会
令和7年3月9日(日)於:あましんアルカイックホール

そして、そのおよそ一ヶ月後の2025年4月5日、6日に阪神尼崎駅前の中央公園で開催された「第12回徳之島祭り」は、ホールで開催されていた「関西奄美会 第108回総会並びに芸能大会」とはまた違ってオープンな雰囲気。

天候にも恵まれ、おそらく、何も知らずに近くを通りかかった人も「何か楽しそうなお祭りをやっているな」と立ち寄ったに違いない。

「第12回徳之島祭り」の会場を引きで撮った写真。

阪神尼崎駅前の中央公園で賑やかに開催された「第12回徳之島祭り」

会場内には特設ステージも用意され、絶え間なく歌や踊りが披露されていた。

「第12回徳之島祭り」の中峰美由さんのステージの様子の写真。

歌手・中峰美由さんのステージが盛り上がっていた

関西奄美会の先山和子さんと同じく、前回の「あまみ群島ワンダートリップ」の際にインタビューをさせていただいた小林昭弘さん(https://kotosara.net/magazine/amami/002/)にもお会いできたし、その時にお世話になった「美ら島 真心」の栄百々代さんがステージで演奏していたりと、色々な方に会えて楽しい場だった。

小林昭弘さんとスズキナオさんのツーショット写真。

徳之島祭りを主催する小林昭弘さんと

「第12回徳之島祭り」の栄百々代さんのステージの様子の写真。

栄百々代さんのステージも圧巻だった

先山和子さんとスズキナオさんのツーショット写真。

先山和子さんともここでまた再会できた

ステージやその周辺も賑やかだったが、「第12回徳之島祭り」では、公園内にたくさんの屋台ブースが出ていて、そこで買い物をしたり、食べたり飲んだりするのもすごく楽しかった。

たとえば、搾りたてのたんかんジュースが飲めるブースでは、フレッシュな酸味と甘みがぶわっと広がるジュースに「うまっ!」と声を上げた。

生のたんかんジュースの売店の写真。

こんな生ジュースが飲めるのもこのイベントならでは

また、黒糖を作って売っているブースは常に長蛇の列で、印象的だった。

黒糖をその場で製造・販売する売店の写真。

奄美群島名物・黒糖を販売しているブース

大きな平たい鍋の中で黒糖をかき混ぜる職人さんたちの様子の写真。

専用の平たい鍋で材料を煮詰め、黒糖の形に仕上げていく

今まで黒糖を食べたことは何度もあったが、こんな風に、まさに今目の前で作られたものを味わうのは初めてのことだった。まだ温かな手触りを感じながら一口かじってみると、奥深い甘みが口の中に広がった。

スズキナオさんが購入した、ビニール袋に入ったできたての黒糖の写真。

できたての黒糖! とても美味しかった

会場内をめぐりながらお話を聞いてみると、関西圏で飲食店を営んでいる方がブースを出していたり、この日のために奄美群島から出店している方がいたりと様々なようだった。どちらにしても、奄美群島をルーツに持つ方が尼崎の地にこれだけ集まっているという事実を肌で感じ、改めてそのつながりの強さを思う。

会場内の様子は、徳之島の魅力を発信するチャンネルである「徳之島テレビ」の動画でもたっぷりレポートされていたので、参照してみて欲しい。

2025徳之島祭りin尼崎 お店レポート
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私自身、東京から大阪に移り住んで、関西圏を散策するうちに関西と奄美群島のつながりを少しずつ知っていったこともあり、また、「あまみ群島ワンダートリップ」がきっかけで、奄美群島に伺い取材する機会を得たりと、改めて奄美群島のことを身近に感じ、興味深く思っている。

「あまみ群島ワンダートリップ2」の開催も楽しみにしているし、また近いうちに奄美群島に旅してみたいと思っている。

スズキナオ
スズキナオ
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1979年生まれ水瓶座・A型。酒と徘徊が趣味の東京生まれ大阪在住のフリーライター。WEBサイト「デイリーポータルZ」「集英社新書プラス」「メシ通」などで執筆中。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーで、ことさら出版からはbutajiとのユニット「遠い街」のCDと、単行本『ずっとあった店 スナック屋台おふくろ編』を刊行。大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』『家から5分の旅館に泊まる』(スタンド・ブックス)、『「それから」の大阪』(集英社)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』(新潮社)、『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』(インセクツ)。パリッコとの共著に『酒の穴』『酒の穴エクストラプレーン』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)、『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)。

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