遠い街(butaji+スズキナオ)
『膝』特設ページ

遠い街『膝』

遠い街『膝』(1200円+税) BASE等で発売中

 「遠い街」は、シンガーソングライター・butajiと、テクノラップバンド「チミドロ」のリーダー・スズキナオによるユニット。全曲の作曲・歌唱・サウンドプロデュースをbutaji、全曲の作詞をスズキナオが担当している。
 『膝』は、「膝」「知らん顔」「日差しの中で」の3曲からなる遠い街の1stEP。アートワークはアニメーション作家のソーシキ博士、ミックス・マスタリングは葛西敏彦が手がけている。

butaji セルフライナーノーツ

Track1「膝」

 ナオさんとの共作に取り掛かる上で、ソロ作ではあり得なかった「トラックを楽しく作る」ことを心掛けていました。それを踏まえリード曲を作ろうとして出来たのがこの曲です。ラフなアコギ弾き語りのデモをお渡ししたら、すぐに歌詞が返ってきて驚いたのをよく覚えてます。アレンジ段階では弾き語り時の構想は全部捨てて、かわいい音を中心に、シンプルに組み立てていったらこういう形になりました。葛西さんのエッセンスも所々光っております。

Track2「知らん顔」

 2015年頃には既にトラックがあったのですが、渋すぎると思って保留にしていた曲です。結構リズムが難しい曲なのだけれど、これも綺麗に歌詞をはめて頂いて嬉しかった。全体の歪んだエフェクトは葛西さんの提案です。葛西さんに「これはわざとやってるんですよね?」と聞きましたが、書き出しエラーではないそうです。アナログの質感があり良いですよね。

Track3「日差しの中で」

 このEPの中で一番気に入っている曲です。デモ段階では、ギターのミュートで4コード、「見つめていたい」みたいな雰囲気があったのですが、ドラムパターンを組み立てていくうちにどんどん変わっていきました。間奏の倍のテンポになる箇所とコーラスが好きです。こういうメロって、最初からこのドラムパターンとBPMで作ろうとしても出来ないんですよね、展開があり過ぎて。高域も低域もあるし。「あかね空の彼方」で使ったソフトシンセのスライドギターの音色も引っ張り出してきて、オクターブ上で重ねてます。雰囲気があってつくづく良い曲だなと思います。
 この曲は葛西さんからのミックス時の提案があまりなくて、つまり葛西さんもこの曲が気に入ってたんじゃないでしょうか。

スズキナオ セルフライナーノーツ

Track1「膝」

 butajiさんの曲に歌詞をつけるなんて、とんでもないことだと思った。butajiさんの音楽が好きでよく聴いていて、もちろん歌詞も好きだったので、どこに自分が邪魔する余地があろうかと思った。
 しかし、butajiさんが音楽に対してどこまでも真摯なのが見ていて伝わってくるだけに、反対に、他人の言葉ぐらいの方がサラッと気楽にやれる、というようなこともあるのじゃないかと思った。
 そして、そこで少しリラックスしてまた自分の真摯な音楽に対面していく。その手前の休憩所みたいな感じになるならいいかと思って、二人のユニット「遠い街」も、butajiさんにとって気楽な場所だったらいいと思っている。
 私はとにかく未練がましい人間で、変化が苦手であり、人に拒絶されて去っていかれると、生きていけないぐらい落ち込む。
 それで、もうすでに自分の近くにいない人のことをずっと引きずってしまうのだが、大きなダメージの中にいる時は、世界のあちこちにその人の痕跡が残されているように感じてやりきれない。
 自分が愛しく思う人がある時に転んだ場所だっていうだけで、なんでただの地面が意味を持つのか、その不思議さがずっと自分の興味の対象なので、どうしてもそういう歌詞になってしまった。
 生きて行くとそういう場所が増えていって、でもその“地面の記憶”は自分だけが持っているもので他の人にとっては意味がなく、自分がいなくなると同時に消えてしまう、というのもまた不思議なことだ。
 butajiさんに歌詞を送り、すぐにそれを歌った音源が送り返されてきた時、初めて味わうような気持ちになった。カァーッと体温が上がる。慣れるまでに時間がかかった。
 最初の方から完成直前にかけてアレンジがグングン変わっていって驚いた思い出。

Track2「知らん顔」

 道を歩いている時はいつも知っている人に会いそうな気がしている。もちろん実際ばったり誰かに会うことは稀なのだが、「会うかも」という心の準備はしていて、例えばどこか小さな離島とかに行った時でも「こんなところでこそ誰かに会うかも」とやはり思いながら歩いている。
 この「知らん顔」の元のオケをbutajiさんが送ってくれた時に、知らない町をうろうろして気づいたら少し見晴らしのいい高台に出て、そこから町をぼーっと見下ろしているかのような気分になった。
 だから、そんな場所で誰かを見つけて、心の中で「ほらな、やっぱり会った」と思いながらも知らんぷりしてぼーっとし続けるような詞にした。
 だいぶ昔、一人暮らししていた町の中華料理屋へ行こうと友達と歩いていた時、振付師の「ラッキィ池田」とすれ違った。
 後で友人に「さっき、ラッキィ池田いたよね」と言ったら、「へー、そうなんだね。っていうか、いきなり会って、即、ラッキィ池田だ!って思い当たるなんてすごくない?」と驚かれた。
 でも私にしたら、いつも、どこにだって知っている誰かがいそうな気がしている。心の準備ができているのだ。

Track3「日差しの中で」

 これも、butajiさんに歌詞のついてない状態のものを送ってもらって聴いていて、休みの日の気だるい昼っていう感じがして、好きな相手と布団の中でゴロゴロしている気分で歌詞を書いた。
 あの時間に勝る幸せがあるだろうかと思う。ゴロゴロしながら「よし、河川敷でシート広げてお昼食べようか」などと言い、「いいね」って言ったのにそのまま寝て気づいたら夕方になってるような。
 自分の一番最初の記憶が、たぶん3歳ぐらいだと思うのだが、寝室で母と父の寝ている間で目が覚めて、日が差していて、誰も早く起きあがろうとはせず、ずっとゴロゴロしてるだけっていう場面で、その満ち足りた雰囲気を今も覚えているような気がする。
 友達に「人間にとって太陽の光ってやっぱりなんか大事なものなんだと思う」と言われたことがある。「ずっと頭に残っている場面ってだいたい太陽光がセットで記憶されてない?」と言うのだ。
 考えてみると、確かに強い日差しと共に記憶されている思い出は結構多い。でも、同じぐらい雨の日の思い出も色々あるよな。

ことさら出版 ライナーノーツ

遠い街(butaji+スズキナオ)『膝』について(note)

販売場所・販売方法

●店頭等販売:ロフトグループ・石川さん企画イベント / 神奈川県鎌倉市の文具店「コトリ」 / 大阪府大阪市此花区の書店「シカク」 / 埼玉県川口市のカフェ「senkiya」 / 沖縄県那覇市のハンバーガーショップ「BABYBABY HAMBURGER&BOOKS

●通信販売:ことさら出版BASEショップシカクオンラインショップ

※各店舗等の詳しい情報は、こちらのnoteをご参照ください。

ことさら出版トップページ