スズキナオの高知LOVERインタビュー 第4回

第4回 黒潮町の新名物グルメ缶詰と高知の地酒で『“おきゃく”@大阪』を敢行レポート。

スズキナオの高知LOVERインタビュー 第4回

阪神梅田本店1階の催事場・食祭テラスで2025年6月18日(水)から6月23日(月)にかけて開催される「高知フードトリップ~乾杯!土佐の宴会開宴~」との連動企画として、高知県に対して並々ならぬ愛を抱いている人、大阪・中津で高知料理を出している店の店主にお話を伺った。また、私自身、2025年3月に高知県に取材に行く機会があり、その旅の模様を振り返り、高知県幡多郡黒潮町の名産品である「おきゃくかん」という缶詰を食べつつ、土佐酒を楽しんだ模様もレポートした。そんな風に様々な角度で高知県の魅力に迫ろうというのが今回のコラムの主旨である。全4回のシリーズだ。

漫画家の故やなせたかし氏がモデルのドラマが放送され、改めて注目を集めている高知だが、私はその土地のことをほんの少ししか知らない。掘り下げるほどに面白みが湧き出してくるような高知県に、もっと近づきたいと思いながら取材を続けた。


シリーズの第4回目は、高知県幡多郡黒潮町で作られている「黒潮町缶詰製作所」の缶詰と高知の地酒との相性を確かめてみようという試みである。

高知県の南側に位置する黒潮町は美しい海岸線が長く続くまちであると同時に、南海トラフ地震が発生した際、34.4メートルという、日本一高い津波が押し寄せる可能性が想定される地でもある。もちろんそれは、この地域に住む方々にとっては厳しい想定だが、事前に様々な対策を講じておくこともできる。黒潮町では「犠牲者ゼロ」を目標として掲げ、住民の方々と連携しながら、具体的な対策を進めてきた。

その一環として、非常時に有用な保存食としての“缶詰”に改めて着目し、県内の食材を活用した缶詰を作ってそれを産業にしようと立ち上がったのが黒潮町の第三セクターである「黒潮町缶詰製作所」だ。公式サイトをご覧いただくとわかる通り、主に高知の食材を使った多種多様な缶詰が製造されている。高い津波が想定される土地だからこそ、防災産業として美味しい缶詰を作り、それを名産にしようとは、なんとも素晴らしいアイデアではないだろうか。

今回味わったのは、黒潮町缶詰製作所で作られている「おきゃくかん」というシリーズ。今年3月に発売が開始されたばかりの新商品である。高知でいう宴会「おきゃく」が、この缶詰セットさえあればいつでもできるというのが「おきゃくかん」のコンセプトだ。現在3種類作られているその「おきゃくかん」と、それに合う高知の地酒をありがたいことに黒潮町から送っていただき、実食させていただくことになった。

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お酒に合うおつまみ缶詰がセットになった「おきゃくかん」

筆者の仕事場に、「高知フードトリップ~乾杯!土佐の宴会開宴~」の企画を担当した吉田創さん、情報サイト「大阪スケジュール」を運営する黒田ゆうこさんのお二人をお呼びし、三人で楽しく食べ比べることにした。

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楽しい雰囲気の取材となった

「おきゃくかん」には以下の3種類がある。

・「焼き鮎⽸(⾻酒専⽤!)」「焼き鯖寿司⽸」がセットになった【⾻酒と鯖寿司】
・「四万⼗うなぎ蒲焼き」「柚⼦⾹るブリトロ⼤根」「カツオの和だし⽣姜煮こごり⾵」がセットになった【⿂の肴】
・「⼟佐あかうしのスジ煮込み鍋」「⼟佐はちきん地鶏ゆず塩仕⽴て」「栗ようかん」がセットになった【⾁の肴と⽢味】

送っていただいた日本酒は以下の3種。

・仁淀川 純米酒 清流モデル(高知酒造)
・南 特別純米(南酒造場)
・純米吟醸原酒 秀麗(司牡丹酒造)

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厳選した高知のお酒を送ってもらった

どれとどれを合わせていくは三人で相談しつつ決めていった。最初に食べてみることにした【⿂の肴】のセットのパッケージを開けてみる。円筒形のパッケージの中に3つの缶詰と、調理法を書いた紙が入っている。

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左に置かれているのが未開封のもの。中から缶詰が3つ出てくる

缶詰の中には湯せんで温めることが推奨されているものもある。鍋にお湯を沸かして温めた。

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缶詰によっては調理に10分~15分の時間がかかるものも

湯せんした缶詰は当然アツアツなので、やけどなどに気をつけつつ慎重に開缶! こんな風にできあがりました。

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【⿂の肴】セットの3缶と「仁淀川 純米酒 清流モデル」を合わせてみる

先述の通り、【⿂の肴】セットは、「四万⼗うなぎ蒲焼き」、「柚⼦⾹るブリトロ⼤根」、「カツオの和だし⽣姜煮こごり⾵」の缶詰がセットになったものだ。以下、3人のコメントで様子を伝えたい。

吉田:あ、うなぎ……うまい。
黒田:美味しいですね!
スズキ:お酒との相性はどうだろう。あ、すっきりした後味でちょうどぴったりですね。うなぎは黒潮町の黒糖で味付けしているそうです。
黒田:へー! 煮こごり風の缶詰の生姜のスライスもすごくいいです。これ、常備しておきたい。
吉田:普通の缶詰じゃないよね。魂がこもっている感じがする。
スズキ:ブリトロ⼤根も柚子の香りが最高です。3缶のバランスがすごくいいです。
黒田:本当ですね。煮こごり風の缶詰が気に入りました。
吉田:生姜美味しいよね。うなぎもいい。ご飯が欲しくなる。

「おきゃくかん」のクオリティに一同驚いたところで、次は【⾁の肴と⽢味】セットを食べてみることに。「⼟佐あかうしのスジ煮込み鍋」、「⼟佐はちきん地鶏ゆず塩仕⽴て」、「栗ようかん」の3缶がセットになっている。

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【⾁の肴と⽢味】も3缶がセットになっている

「おつまみの缶詰セットなのに『栗ようかん』?」と思う方もいるかもしれないが、高知では「皿鉢(さわち)料理」といって、大皿に惣菜から甘味やフルーツまでが盛られた料理が「おきゃく」の際に用意されるのだという。これ一皿あればいちいち台所と宴席との間を行ったり来たりしなくてもいいという配慮から生まれたものだそうで、男性も女性も隔てなくゆっくりお酒を飲む場が大事にされてきた高知ならではのものなのだ。この【⾁の肴と⽢味】のセットでは、その「皿鉢料理」の雰囲気を体験することができる。

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【⾁の肴と⽢味】も3缶がセットになっている。「純米吟醸原酒 秀麗」を合わせてみることに

吉田:なんかさ、正月みたいな気分だよね。
スズキ:いい宴会になりますね。
吉田:煮込みのお肉が「⼟佐あかうし」なんだね。あかうしは脂肪が少なくて、注目されているらしい。

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こちらもバランスの妙を感じる3缶だ

黒田:⼟佐はちきん地鶏の缶詰、あっさりして、さわやかでいいです。
スズキ:⼟佐あかうし、うまい! これも黒糖で煮込んでいるそうです。これはお酒が進むわ。
吉田:司牡丹の「秀麗」、美味しいね。この煮込みとの組み合わせ、いいと思う。
スズキ:さて、「栗ようかん」を食べてみますか。……あ、美味しい。そしてお酒に合う!
黒田:普段そんなにようかんを食べないんですけど、これは手作り感があって好きです。
スズキ:あっさりした甘みなんですよね。お酒に合う味わいに作ってあるのかも。

最後は【⾻酒と鯖寿司】のセットだ。こちらは、骨酒用の「焼き鮎⽸」と「焼き鯖寿司⽸」の2缶の組み合わせ。

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骨酒と焼き鯖寿司が堪能できるセット

骨酒用の「焼き鮎⽸」の方は手に持つと軽くて、開けると焼き鮎が入っていた。

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この焼き鮎で「骨酒」を作って飲むことができる

「南 特別純米」をワンカップに移し、お燗して焼き鮎を入れてみた。

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どんな風味になるのか、楽しみだな

もう一方の「焼き鯖寿司⽸」はずしっと重たく、15分ほど湯せんをして温めることが推奨されている。

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画像キャプション:締めの一品にもなりそうな「焼き鯖寿司⽸」

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これもまたいいセット

黒田:焼き鮎は3分ぐらい入れると味が出るらしいですよ。
吉田:骨酒ってすごいよね。もう少し置いておいたらさらに味が出そうだね。
スズキ:「南 特別純米」、そのまま飲んでも美味しいし、骨酒にしたらまた全然違うな。
黒田:ご飯に「ゆのす(ゆず果汁)」を使っているんですね。香りがいいです。
スズキ:お米、もちもちでうまい!
吉田:これ、飲んだ後の締めにいいね。鯖がそもそもうまいな。
黒田:立派な鯖ですね。ごちそうですよ、これは。
スズキ:あ、骨酒からさらに味が出てます! 美味しい!

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鯖の下には「ゆのす」のきいたもちもちのご飯が

……と、3つの「おきゃくかん」を食べ比べながら、美味しいお酒を飲めたひと時だった。

スズキ:「おきゃく」気分が味わえるセットでしたね。
黒田:食べ比べるのが楽しかったですね。
吉田:「おきゃく」って究極は知らない人と飲むことなんだって。だからこうやって、みんなでワイワイやるのは正しいんだよ。
スズキ:たしかに。この缶詰があれば、それだけで会話が弾む気がします。
吉田:いいね。まだお酒もあるし、もう少し飲もう。

「おきゃくかん」のおかげで、いつもの事務所が「おきゃく」の場になった。「黒潮町缶詰製作所」の商品は通販でも買えるので公式サイトをチェックしてみて欲しい。

株式会社黒潮町缶詰製作所|未来を作る新しい缶詰
黒潮町缶詰製作所は「もしもに備える食」と「毎日美味しい」をテーマに自然あふれるこの町に小さな工場を構え、地元の新鮮で安全・安心な素材をひとつひとつ人の手によって丁寧に缶詰にしています。 缶詰だからこそ出来ることに拘りいつもの食卓を楽しく彩る...


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1979年生まれ水瓶座・A型。酒と徘徊が趣味の東京生まれ大阪在住のフリーライター。WEBサイト「デイリーポータルZ」「集英社新書プラス」「メシ通」などで執筆中。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーで、ことさら出版からはbutajiとのユニット「遠い街」のCDと、単行本『ずっとあった店 スナック屋台おふくろ編』を刊行。大阪・西九条のミニコミ書店「シカク」の広報担当も務める。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』『家から5分の旅館に泊まる』(スタンド・ブックス)、『「それから」の大阪』(集英社)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』(新潮社)、『大阪環状線 降りて歩いて飲んでみる』(インセクツ)。パリッコとの共著に『酒の穴』『酒の穴エクストラプレーン』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)、『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)。

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